感想記録

9月からの鑑賞記録をざっくり。2ヶ月で5本しか見てない……。9月なんて日曜日に見たゴンドリさんだけだものねえ。阿佐ヶ谷の「東京映画地図」も足繁く通いたいのに。会社帰りに映画館に駆け込む体力も無く、珈琲飲みにもしくはカレー食べにお店行って、美味しいなあと滲みいって、ぼーっとしたり店主さんとお話してライフを回復するのが続いているのだけど、11月からの新作映画「溺れるナイフ」「ぼくのおじさん」「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」「誰のせいでもない 」「ブルーに生まれついて」「皆さま、ごきげんよう」は見たいです。と書いておけば叶うことでしょう……。


ミシェル・ゴンドリー「グッバイ、サマー」(恵比寿ガーデンシネマ) | 現実をファンタジックに彩る匙加減が良いなあ。動くログハウスがギコギコ動く様に、ゴンドリさんにありがとうーと感謝したい気持ちでいっぱい。最初の方の、弟とサッカーしてるとこに自転車でやってきたテオくんが混ざるシーンの、ああゆう描き方が好き。ちょっとしたシーンに表れるセンスというか、在り方が大切だなあと思う。ラストシーンの曖昧な潔さ! 写美行く前に席取ったものの、写美がつまらなすぎて時間空きすぎて恵比寿を散歩した日曜日の午後。写美と写美の映画館とガーデンシネマ使って、ミシェル・ゴンドリーウェス・アンダーソンといった映画作家の特集をやってくれないかなあ。ヴェンダースのように写真集を出している監督もいるし。


深田晃司「淵に立つ」(角川シネマ新宿) | 容赦ないんだけどフッと可笑しみが入り込む。最初から壊れてて結局解決も何もしないまま、残された者の人生は続いていくしかないという、不公平な残酷さ。深田監督のこういう視点を信頼している。こんなに達観してるのに1980年生まれって嘘でしょ……。声の位置がときどき変なのも、見えない存在を感じる音響設計だし、赤の小道具など「ここテストに出ますよ」的な筆の置き方が随所。「何故絵を描くのか」という問いに対する「言葉」に泣いた。今も思い出すと心の奥底からぐっと立ち上がる感覚がある。不思議なのは、帰り道のことをまったく覚えていなくて、どの映画館で見たかも思い出せないこと。土曜の新宿だったなんて…。


西川美和永い言い訳」(109シネマズ二子玉川) | インタビューでの語り口は好きなのに、映画となるとアレコレなんだかモヤモヤばかりで、今作もそうだった。描こうとすることに対しては発見があるのだけど、描き方に違和感がある。同性ゆえなのかなあ。それと音楽の起用と使い方がどうにも合わない……。今作は子供の演出に師匠である是枝色を強く感じて、そこも苦手だった。とはいえユキオさんの人物造形に自分を投影してしまう。深津さんの澄んで消え入る存在感が素晴らしかった。時間とタイミング諸々で日曜にここで見たけど、繁華街の喧騒が無いしSC内の別棟なので、うんざりしなくて良い映画館でした。


中野量太「湯を沸かすほどの熱い愛」(渋谷シネパレス) | 監督が思いついた、人物設定(各登場人物ごとに一本撮れそうな)やエピソードをもれなくすべてテンコ盛りにし、ラストなんて鼻息感じられるほどの、アツいエモさ全開。もしかしたらラストシーンありきで(5年くらい前に公開された某邦画を思い出したり…)*1、成立させるために繋げたストーリーなのかも。 アツい=頑張れ立ち向かえなのはゲンナリするし、これほど過剰に掛け算をし仕込まないと商業映画はダメなのかしら。リアルなファンタジーを肉付けした俳優陣が見事。この日は出先から帰れたので、寄れて良かった。シネパレスは今や古き良きな映画館で、佇まいが好き。数少ない落ち着く映画館。


同時期に公開されて見に行った邦画3作、30代後半〜40代前半の監督作で、それぞれ「生きること」の視点が三者三様に描かれているのが興味深い。


ホン・サンス「あなた自身とあなたのこと」(東京国際映画祭 六本木EXシアター) | ホン・サンスはすごくすごく好きな作品とイマイチのれずな作品にわかれるんだけど、今回のは後者でした。毎作繰り返す「人間の不確かさ」は禅問答の粋に達してて、如何に描くかなので、そこが合う合わないなのかも。そもそも予想以上に本降りの雨で、やっと着いたEXシアターは可動式の椅子の座り心地もスクリーンとのバランスもひどくて、何よりも国際的と思って運営している映画祭がコレ?って安い場内に唖然。チケ地獄には合わなかったからよかったけど、予算削減とスポンサーへの顔立てでこの有様なら、ほんとうに悲しい国だなーと映画に没頭できないレベルでした。小さな映画館でもういちど見たい。


ほんとはその日か次の日くらいにさらっと書きたいんだけど、まとめて書くとなんとなく繋がってる気がするから、これもよしとする。

*1:追記:アルテリオシネマニュースで読んだ監督のインタビューによると、卒制で撮った作品のラストとほぼ同じだそうです。