坂本慎太郎 at iquidroom

1月17日水曜日のこと。2010年にゆらゆら帝国解散後、2016年には3rdソロアルバムリリース、他楽曲提供などコンスタントに制作活動を続けながらも、昨年漸く、それもドイツで初ライブを経て、日本でのソロ初ライブ。
茶店店長に「当たった人初めて見た」と言われた後ネットで探ると、確かにチケ取れずコメント多数で、これは見れるの奇跡では……と向かった会場では予想以上に若い人が目につき、あ、あれ?oldファンの割合が少ない??

序盤はのたりのたりと、黄泉の保養地的ムードが醸し出される。緊張感ある楽園、その様はちょっとゾッとするほどだった。次第に温く決して熱くならない熱が帯びていき、会場が揺れていく。空気はあくまでも淡々と。ふわっと軽いのにのぺっと重い。しかし中盤、びよ〜んと立ちあがりゆっくりと渦を巻く音、音、音!口があんぐりしてヨダレ出てシビレルような音!そこからの、脱臼しながらクッキリ踊ってしまうグルーヴがまたすごくって!

坂本さんは丁寧に歌詞を唄う。こんなに唄いあげる人だったっけ?とびっくりするほど「シンガー」だった。奇妙キテレツな言葉の使い方は音としても機能していて、特に「ずぼんとぼう」の陶酔状態は凄まじかった。言葉になってない言葉をはうはうはうと呟いてく様には震えた……。ギターは体と唄に吸い付くように不可思議なフレーズを語りだす。時にPAの中村さんが掛けるエフェクトで増幅していく。
ベースのAYAさんは難しいフレーズをクールにこなし、高く澄んだ声でコーラスも絶妙。ドラムの菅沼さんが与える引力と広がりの中を、西内さんがサックスやギロなどで豊かに彩り泳いでいく。坂本さんの作り出した世界観をどう形にしていくか大変だったと思いますが、唄と演奏のバランスは完璧でサスガな演奏。そしてエフェクト込みの音響と照明が加味されて、丹念に作り上げられたステージ。
殆ど喋らず「あ、あ、最後の曲です」とつんのめりながら言って、演奏終わり、拍手喝采の中メンバー紹介。アンコールは当然やらないでしょうね(でもドイツの公演でやったらしいから、まさか?)と思っていたら、まだステージ上にいるのに「アンコールやります」と言うから、みんなでズコー!大笑い。美しいメロディの曲で終了。  

ソロワークを網羅しながら、構成が絶妙なセットリストで、不思議な熱と質量に包まれながら楽しかった! 隙間があるのに濃厚で、存在感あるのに存在が希薄で、ぬめっとしてるのにカラッとしてる、この感覚はいったいなんなんだろう。スタジオワークだけでなく、ライブでこの世界観。なんて唯一無二な音。