清澄白河から巡る

清澄白河へ向かう。最近はオトメ向きな店が出来たりして歩く人々もトートバック片手にワンピース重ね着女子が多く見受けられます。こちらに本社を移したヨーガンレールもオーガニックな社食が「その手の誌面」を飾るようになり、ナチュラルアイテムやマフィンが手に入るココのショップも近頃「オシャレスポット」のようだけど、そんな風潮が不思議なキブン。何故かと云えば母がここの服を長年愛用しているから…どうしても母を思い出すんだよ…。
さてはて到着したのはギャラリーが幾つも入っているあのビル。目当てはタカイシイギャラリーの前田征紀さんの「UNIVERSAL LOVE」展、光の空間をテーマにした作品は以前COSMIC WONDERで見てぐっときたのだけど今回初個展とのこと。でもちょっとノレなかった。天井が低く閉ざされた空間では「光」を感じることが出来ず、流れていた音もピンと来なくて。展示場所によってかなり印象が変わりそうで、今後の展覧会に期待したいなあ。
上の階の小山登美夫ギャラリーのも個人的に惹かれなくて(カワイク不気味なキャラクターがいかにもでねえ…)、シュウゴアーツの藤本由紀夫さんの「遠/近 Perspective」、こちらはよかった。このあいだのICC「ライト・[イン]サイト」で目にも心にも強烈な印象を残した作品の作者でした。
ぼわんと文字のかたちが曖昧になって意味も曖昧になったときに見える言葉感じる言葉がそこにありました。
ビルを出て隅田川沿いを歩く。




佐賀町を懐かしく思い出しつつ永代橋の袂には寒桜が咲いていた。


そのまま永代通りを進んで茅場町、BASE GALLERYにて寺田真由美さんの写真展。モノクロームの作品は誰もいない白い部屋が映し出されている。風にそよぐカーテンが作り出す光と影の美しさ。どの作品にも人の気配がはなく、穏やかで潔癖で静謐で、その無音な様はかつてそこにいた人の不在を思わせる空虚さや不穏さも感じられるけれど、暗闇から溢れるドラマチックな光は明るい方へと誘っていて、私はその光のなかへこころを進めたくなる。
しかしこの部屋は彼女自身が作ったミニチュアの室内を撮影したものであり、新作では実際の「風景写真を背景に」していたりする。そんなこといわれなくちゃわからない。でもそういったつくりこみが不可思議な後味としてこころに刻まれ残るのだと思われた。特にぐっときたのは、揺れるブランコの写真。回りの樹々が作り出す光と影の模様がとっても素敵だった。流れる時間の一瞬がぎゅっと凝縮されていて、その輝きに目眩がした。
ゼラチン・シルバープリントによる質感がまた素晴らしく、時間枠が変容してずっとここにいたい魅惑的な空気に満ちていました。


そこから日本橋、銀座へと歩いて途中珈琲を飲む。オールドビーンズに初めて挑戦してみたらこれがまあ、衝撃的な美味しさ。酸味がくっと来たあとにぶわああっと、重ねた年月による燻したような芳香が広がって…。ああ「この世界」に突き進んじゃいけない!(レア盤漁りするようなもんだ)と震えながら律しましたブルブル。


銀座線に乗って表参道へ、rocketにてarikoさんの写真展、アイスランドの風景がひいやりと。薄い色素でくっきりと広がる写真の傍らで上映されていた映像作品はぼんやりとして遠い記憶のようだった。音楽がよかった。ここは吹き抜けの天井が高くて上から音が降り注ぐからきもちよい。そしてタワレコ寄って(はっぴいえんどを面出し展開して「今聴くべき」とキャプションついてた)帰路に着く。晴れてきもちよいいちにちだったけど、肌寒くなってきた。