さいきん見た展示〜ムラタ有子展/フィリップ・ワイズベッカー展ほか

●「ムラタ有子展」東麻布のギャラリー サイド2にて。
こんな場所にギャラリー、いつの間に…。さて、ムラタ有子さんの絵はポラリスのジャケの、というとわかりやすいかもしれません。装丁など印刷物でよく拝見していましたが、原画を見るのは初めてです。
ポラリス
シンプルでマットな印象を持っていましたが、実際見ると表面はツヤヤカで筆の跡が大胆に残されてリズムを静かに生んでいます。アクリル絵の具で描いていると思っていたけど油彩だったのか!ぜんぜんマットじゃないし、やービックリしました。でも「マット」に思えたのは作風のせいじゃないかと。グレーや水色に茶色、やわらかく色味が抜けたパステルカラーでざっくりと切り落とされた構図、簡潔に描かれながらゆるさがあって、でもどこか寂しげで人を寄せ付けない雰囲気が漂っている絵。90年代が終わった「2000年の空気だなあ」と感じるのです。
愛らしい動物をモチーフにされることが多くて一見すると「カワイイ!」と言葉を漏らしてしまうけれど、こころの奥底にじわんとひっかかってくるものがある。それは誰もいない海岸や山並みを描いた風景画にも通じます。「世界の中ひとりぼっち」な穏やかな静寂のなかにぽっかり浮かびながら、でもあたたかなひかりを感じ、歩き出したくなるのです。6月20日まで開催。


麻布というとオシャレなイメージがあるかもしれません。
それは80年代における西麻布や最近の麻布十番によるもので、こと「東麻布」は毛色が違うのです。

大きな地図で見る
大江戸線が開通したことで「赤羽橋」が最寄り駅となったけれど、それまではどの駅からも遠いため「車が交通手段」であり、一般的にはぽつんと取り残されたエリアだったといえます。地図を見るとそれがよくわかるはず。この「陸の孤島」のおかげか、魚屋さんなどが並ぶ商店街や古くからの住宅が今もちょっとした「下町風情」を残し、時間が止まっているような雰囲気。会社もちょこちょこあるけどのんびりとしています。そしてその向こうに東京タワーが鎮座しているのです。最近ではオシャレなご飯やさんやお菓子屋さんなどが出来ているし、hanakoの麻布十番特集で「ちょっと足を伸ばして」なんつって紹介されているのでしょうか?
近いうちに神社のお祭りのようで店先にあるお飾りが素敵でした。


以前の勤務先にほど近く、この辺りを時折往復していたので懐かしく思いながら歩きました。


URの特別公開は行けませんでした、ザンネン。以下は既に終了した展示です。

  • NHK放送技術研究所 技研公開」 小難しいことは勿論さっぱりわかりません(キッパリ。)が、とにかく「スーパーハイビジョン」の美しさに仰天。まず大きなディスプレイで札幌からの生中継映像を。NHK札幌放送局の屋上から札幌大通りを捉えた映像がまるで「部屋の窓を開けたら、そこは札幌だった。」かのように、「映像感」がないの!すごいいぃぃぃ。音もがっちり拾っていてカラスがぎゃーぎゃー鳴いてるのも、自分の目の前にいるような臨場感。次に地下で、大きなスクリーンで大自然を撮ったイメージ映像を見たのだけどこれもまたスゴかった。走るSLとか子供が遊ぶ水とか、何コレー!腰が抜けましたヨ。
  • 「ベアリンググロッケン」 PCなど機械部品として欠かすことのできないベアリングの「球」をつかって鉄琴を自動演奏させる、というシロモノにたまたま入ったスパイラルで遭遇。コロンコロンと小さな球が鉄琴に落ちることで、澄んだ美しい音色が響き渡るのです。音はもちろん目でも楽しめて、公共施設の一角にあってもおかしくないかも。
  • 「フィリップ・ワイズベッカー展」 クリエイションギャラリーG8にて。工具など日常品を、定規を使って鉛筆で描かれています。ノートや段ボールなどに「一度描いては消し」痕跡を残しながら構成されていて、キッチリと線を引いているのに変なパースがついていて、奇妙な後味を残すのです。何故定規を使うのかというと「定規を使わないで書く線には魂が入ってしまう」からとのことだけど、魂ではなく「ワイズベッカーさんの人柄」が感じられるのです。まじめで誠実で頑固で、でもあたたかな眼差しで世界を見続けている人、なんじゃないかなあ。新作に成るにつれてますますミニマルに研ぎ澄まされていて、静かに引き込まれました。