イジー・メンツェル二本立て〜「英国王給仕人に乾杯!」「スイート・スイート・ビレッジ」

早稲田松竹はほんとうに素敵に組んでくれるなあ。

まずは今年公開された最新作「英国王給仕人に乾杯!」。
輪舞にのってくるくる廻る、優雅で、軽やかで、滑稽で、淫靡な毒を秘めた甘美なる日々を綴じ込めた映像に酔ってしまった。指先までピンと伸びた品のある様が頭から離れない。邪気ある子供心を持ちつつ、いろんな人や物事に出会って、お爺ちゃんになった大らかさが滲み出る。輪舞のリズムもナチスドイツに共産主義にと、足をすくわれてしまう。描かれない投獄の日々を思うと苦しくなる。あのとろりと描かれる世界は「回想」だからこそ、なのかもしれない。そのように思い起こされるかつての日々は彼の誇りであり、だからこそ屈することなかったのだと思う。逞しさとか揺るぎなさとか、芯が強くあらねばなあって。とっても素晴らしい作品だった。


続いて1986年製作の「スイート・スイート・ビレッジ」。
くすくすくすくす笑いが続く、円を描く。身勝手な「大きな世界」に翻弄されてしまうチェコに住む"我ら"の「小さな世界」だけど、今日もまたビールを飲み、語らい、笑いあうんだって、それだけで、ってこと。酒樽みたいな体にオーバーオールがはちきれそうなパヴェクとひょろひょろのっぽのオチクとのコンビや、チャーミングなオチクのおばーちゃん、村のひとびとがたくさん出てくるけどみんないい顔。(しょーもないことしてるひともいるけども。)オチクが映画館に通うってのも監督の思いが感じられていいな。また見たいな。

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なんだか「秋の初めに見た映画」として心に残る気がします。そういえば、近所のスーパーで二十世紀梨が手頃な価格だったので買いました。この時期何度か書いていますが、Y氏の「梨は二十世紀梨しか認めん!」という訴えに、今まで「豊水のジューシーで甘ぁい味わいこそが梨だ」と思っていた私にもようやく、その良さがわかるようになった今年の秋なのです。