ジョン・ルーリー:ドローイング展〜YOU ARE HERE

ジョン・ルーリージム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ダウン・バイ・ロー」の細長い顔と体、着こなしはカッコ良くもトボけた姿に惚れてしまって、ラウンジ・リザーズにはズギュンとココロを打ち抜かれた私は、"80年代のニオイに憧れた"90年代前半の空気を吸い込んだひとりだ。そして「フィッシング・ウィズ・ジョン」には大笑い。サイッコーにクールなジョン・ルーリーはあの頃のNYの体現者だった。
Stranger Than Paradise (1984 Film) And The Resurrection Of Albert Ayler Lounge Lizards
久しぶりに彼の姿を見たのは2005年、雑誌「BARFOUT!」だった。ジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」公開記念特集に続いて掲載されていた。そこにはあの「クール」な彼はいなかった。遠目にも老けていて印象は全く異なっていた。「病気を患い、音楽/俳優活動を休止した」と書かれていて、その内容に絶句した。そんな!もうあのカッコイイ彼を見ることは出来ないのか!
失意のなかで彼は絵筆を握り、絵画制作を始めたことが紹介されていたのだけど、その絵は私としてはなんともいいづらいもので…さっきまでジャームッシュの新作について読んでいただけに、いろんな意味でショックだった。
そんなことがあったから、今回の個展は正直言うと不安だった。
しかしとても良かったのだ。彼のなかで昇華されたものがあるように思えた。幼稚に思えた作風もある意味洗練されて、ふっと空間に浮かんでいるようだった。狂気と混沌が自由になって、彼の根底にある無邪気さと渦になって駆け回っている。
バスキアを思い出した部分もあったけれど、そういえば友人だったんじゃないだろうか。
自らの表現方法を失って、絶望の淵に立ったアーティストはいったいこの先どうすればいいのか?ジョン・ルーリーはその答えを出して、私たちに見せてくれた。

2階吹き抜けの壁は美しい青だった。隅っこにクレジットがあり、「Lurie-blue」と記されていた。