富山はレコの街


富山駅からトコトコフラフラ歩き、繁華街にやってきました。「総曲輪」と書いて「そうがわ」と読むことを知りました。
昭和な看板のアーケードをくぐるとシャッター商店街なことはなく、核となる百貨店も賑わっています。商店でよく目に付いたのは洋服屋さん。いわゆるオバサマな洋装店もあるけれど、若者向けの店も多いしHIPHOPなトコからナチュリラさんまで、オシャレな店がいろいろありました。キョロキョロしながら歩いていたら

あれ?あのポスター?!

えええ!この街で「動くな、死ね、甦れ!」をお目にするとは…。ビックリ。ちょっと興奮してしまった。ミニシアターがありました。閉館した映画館を市が譲り受け、市の第3セクターが管理、市民が運営に協力するかたちで復活したそうです。

商店街を抜け、住宅が交じる静かな通りを歩いていると

レコード屋さんがありました。入ってすぐの棚にエンケンのサインが書いてあって、オッ。60年代〜のロックを始め、世界中の音楽が新旧問わず並んでいます。店内はこじんまりとしていて…と思いきや、細い通路の奥の部屋にはギッシリとレコードが。全体的にジャンル分けやキャプションも丁寧にしてあって、掘ると何かが見つかる感がむわあん。住んでたらこの店でたくさんの音楽に出会うんだろうなあ。50代くらいのご夫婦が店の前に車を停めてやってきて、2人で時折話しながら棚を見てたのが印象的でした。


そして繁華街へ戻ろうとしてたら

ここにもまたレコード屋さん!こんな民家みたいなトコで!ガラガラ〜と引き戸をくぐると、レコード!レコード!レコード!レゲエ〜ROCK STEADYが中心で、ドカッと箱に並ぶ店内はいい雰囲気。ドキドキします。私はあまり詳しくないジャンルなのでガッツリとは見なかったけれど、お宝がゼッタイ見つかるだろうなあ。


それからここ。

ブラジル、アルゼンチン物を豊富に扱う店ということで楽しみにしていたのです。けっこう広めの店内には建設現場の足場を棚に見立て、レコードやCDがたくさんたくさん並べてありました。や、もうほんとにずらりと、なんというか雑多に、コーナー分けやキャプションもなくって、「こ、このなかからワタスはどうやって見つけ出せるの…」とちょっと途方に暮れながらもワクワクしてきました。こういうときはもう、ジャケ買いですよジャケ買い。ピンときたものを買う!それにまたどこで出会えるかわからないモノばかりだし!てなわけで、解き放たれた犬のようにワアアアアっと店内を駆け抜け、ピピっとキタものをピックアップ。
店主の男性に話を伺うと、最初こそ”門を閉めた感じ”だったけど次第にいろいろお話しくださり、「じゃあコレもいいんじゃない?」って盤を薦めてくれたりでそんな交わし合いが楽しかったなあ。飄々としてるけど頑固な感じの人。とにかく自分の好きな音盤を誰かに渡していくってことをシンプルにしていて、別段ビジネスにしようと鼻息荒くないし、でも話すと秘めた強い想いがグギギと表れてきて、いいオジサンだなあって嬉しかった。盤をいくつか紹介してくれたけど、最後に薦めてくれてY氏が買ったのが一番良かったってトコも、”徐々に”出してくれた?って感じでいい店です。

私は4枚買ったのだけど、中でも最初に目に止まって一番気に入ったのがこれ。
Melimelum
なにこの愛らしさ!ズギューンとやられてしまいましたヨ、これは名盤の予感…。恥ずかしながらまったく知らないのでオジサンに聞いてみると「…うーん、まあ、アルゼンチンの…昔の、フォーク・ロックですわ」といわれ、うむ、ダイジョブだろうと帰宅後聴いてみたら、ちょう当たり!この手の好きな人には、今さらだねえと冷たくいわれそうだけど。
やわらかい男性ボーカルと優しいギターの音色にフルートが絡んできたり、鳥がさえずり波がさざめき、静かで穏やかなきらめく春の海がここに。ぽわ〜んほわ〜んとしちゃいます。途中ではっぴいえんどですか?って曲になったり、プログレ的展開になるのもオモシロイ。
こうやってまだ見ぬ知らない音盤に旅先で出逢えることはほんとうに楽しくて幸せ。ここに通って「このあいだ薦めてくれたやつ、よかったですよー」「じゃあこれ、いいんじゃない?」ってお話しながら、もっとたくさんの音盤に出会えたらなあ。

他にもまだレコード屋さんはあったのだけど(パンクでハードコアなのとか)、ここで使い果たしたために(いろんな意味で)打ち止めにしたのがザンネンです。


ほへーっとなったので、昼間に通りかかって気になった店に行くことにしました。

この入口はもう、期待しちゃうわー。喫茶店のような店内で、誰だか忘れちゃったんだけどSSWモノがかかってて、お店のおにーさんも含めて高円寺にありそうな(でも無い)感じ。ボケーッと家以外のところで好きな音楽を聴ける店だなあ。


富山がこんなに「レコード屋のある街」だとは思っていなかったし、しかもどの店も「濃ゆく」「我の道を進む」といった具合で信念を貫く店づくりなことに驚きました。店主の想いが棚から伝わってくるし、かといって押し付けがましくない。そういう店が生まれ、続けることが出来る風土がこの街にはあるのだなあ。この「富山県人気質」っていったいなんだろうか。
もしかしたら、加賀藩に長年押さえつけられてきた歴史も関係あるのだろうか。寒さや雪にも耐えながら芽生えた反骨心とかね。