dip tribute -9faces- RELEASE PARTY

渋谷クラブクワトロにて。私が初めて見たdipのライブはメジャーデビュー記念のここ、クラブクワトロだった。そして2005年3月、活動一時停止という触れ込みがあったライブもここで。案外と「記念すべき節目となる場所」なのかもしれません。あの日と2012年の今日が繋がるなんて!

明日は普段のdipやオレではなかなかないものが観れると思うから是非来て欲しいです。

とヤマジさんは呟いていたけれど、もう、ほんっと、「なかなかないもの」のオンパレード。こんなに楽しく、笑ったり叫んだり、あたたかな気持ちになったライブはこれまで無かったなあ。。。
憧れのミュージシャンとセッションし、後輩ミュージシャンからの敬意に満ちた演奏が披露され、それを受け披露した新曲の強くスリリングな輝きったら!dipは憧れのミュージシャンからの影響を隠さないし、その曲への敬愛を込めたカバー曲を多く演奏してきた。日本ではとかく自分語りが好きなミュージシャンが目立つ中で、異質とは思う。そんな彼らが「トリビュートされる」側に立ったのには驚いたし、感慨深い。


当然のごとく感想は長くなるのでちょろっと項目を。。。

  • 池畑さんとバトルロッカーズの「セルナンバー8 」!
  • ノベンバのこばやしくんがヤマジさんに「キュン死」
  • モーサム、かっこいいねえ!
  • で登場の、dip。新曲カッコイイイイィィィ!
  • my sleep stays over youやった!うわああああ!
  • ヤマジさんがPOLYSICS印のゴーグルを…!
  • チーバさんはロックスターだね…

終演は22時過ぎ、それでももっと聴いていたかった。子供のような言い方だけど、楽しかった!
さて以下、長い長い旅のような感想文です。


【DJ:小野島大
セント・エチエンヌにスープドラゴンズ、ローゼズ、キャンディフィリップ、マイブラ、、、90年代初頭のBEAT UKな音の連続に私の中の「90年代前半魂」が泣いた…。王子の3-D CLUB BIRTHで小野島さんのDJで踊っていた若き日の自分が蘇りますよ…。100円番長ーーーーーー!!!


池畑潤二さんとのセッション】
エモーショナルなのに冷静で知性がある、音。甘えも隙もなく、純粋な音のカタマリに圧倒させられる。
あれ?これは…ってバトルロッカーズの「セルナンバー8 」、これはヤマジさんも嬉しかったことだろうなあ。
更にモモさんとベラさんが入っての「T.V. Eye」! スパークして益々加速する空気、ちょうカッコイイ!
しょっぱなからこんなハードル高くてダイジョウブかしら?って演奏だった。


小野島大・中・小】
これはなにかというと、開場時とステージ転換中のDJに小野島「大」さんが参加していたのですが、そこでヤマジさんが「中」、更にART-SCHOOL木下理樹さんを「小」としての、トークなのでありました。
ヤマジさんの遅刻ネタを定番(円盤のトークで2時間遅刻は伝説として永遠に言われるのでしょうね〜)に、終始緊張恐縮の木下さんは「18のときに『TIME ACID NO CRY AIR』を聴いて、引きこもりでもいいんだって…」と話し、場内爆笑。うん、dipはそういうダウナーなイメージがついているけど、そういう感覚は今は無いってことを再認識させられた。このトーク含めてヤマジさん、茶目っ気たっぷりでおおらかな印象。「ダイジョウブ」って声掛けしたり、なんかこう、「センパイっ!」って言いたくなっちゃうかんじだもの。


THE NOVEMBERS
トリビュート盤の中では出色の出来だった「human flow」を生で聴けて嬉しかった。やはり、とても美しく儚くたおやかで、、dipの持つ音の一部を継承していることを実感させられた。そして彼らの楽曲は攻撃力と繊細さを併せ持ち、音楽を意識的に聴き始めたときには既にRadioheadがロックヒーローであった世代だなあなどと思う。そんな世代が後から「love to sleep」を聴いて衝撃を受けるのは、自然なことに思えた。それにしてもこばやしくんは年上キラーでカワエエねえ!「今日出ている人たちは(戦隊物の)レッドばっかりで」「(さっきのトーク中に)ヤマジさんが”NOVEMBERS好き”って言ってくれたでしょ。あれ、僕の空耳かなあ。。でも僕、そのとき膝がガクガクして。キュン死にした。」とかなんとかって…!


MO’SOME TONEBENDER
私はデビュー間もない頃、queかどこかで見て。その後朝霧JAMで見た以来なのですが、印象が全然違って驚いた。カッコイイ!!!クールでアツくフリーキーで、ただ滅茶苦茶なことをやってるんじゃない。時折循環して活性化させてるように思えた。2曲目のインスト(に少しシャウトが入る)がすごく好き!トリビュートの「TIME ACID NO CRY AIR」はdipと違った拍で転がってる音がカッコヨカッタのだけどライブでは凶暴性が増してて、この曲でこの感じはdipでは無いなあって、他のバンドがやるとこうなるんだなあって嬉しかった。そして最後にもう1曲、ハチャメチャなカオスっぷりに圧倒!あれフリクションの曲だったのかー。凄まじい怒涛疾風の演奏は「dipへの挑戦状」のようでカッコ良かったです。


dip
そして本日の主役登場。いつも通りに言葉も無く始まって。んでサラ〜っと「garden〜 delay」をやるもんだから、ちょっと驚いた。この2曲やるの、個人的には意外だなー。
で、今回は音がよい!ベースの音の粒はクッキリとし、ドラムもパシッとタイト、どちらも重くなく、でも確かな存在感。そしてギターはクリアでつややか、滑らかで美しい。たった3人とは思えない、分厚く強靭な音!かといってドカドカ踏み込んでくるのではないバランスの良さ。ああ!
観客から「ヤマジー!」と歓声、手をサッと上げて応える姿に笑う。
そしてビビッとくるイントロで始まった曲、、、カッコイイ、、カバーじゃないなこれ、新曲? カッコイイ!ギターのフレーズにやっぱり痺れて、そこに対ドラム、対ベース、って音の掛け合いがあって。スリリングで不穏でキリキリしてて、でも強靭でドカッと構えてて、でもフッと軽やかで。これから演奏するたびに形を変えてゆくのだろう、いつだってそうやって名曲が生まれてきたのだから。

昔の曲を今のオレがやるにはムリが必要で、だから今作ってる曲を早くライブでやれたらいいと思う。古い新しいではなくて今の気分に合わないんだよな。単に飽きたとも云うが。そんな気持ちに数年振りになったのはとても良いことだと思うけど。

数日前言っていたこんな言葉、ヤマジさんがそういう心境になるなんて!というのも、昔の曲をdipでも他のバンドでも頻繁にやるから、ちょっとモヤモヤすることが多かったので、、、ただ昔の曲をやっても、今の演奏力で新たに生まれ変わっているから古臭くはならないとは言えるけれど。
そしたら次に「my sleep stays over you」ですよ!!ぎゃああああああああああ!!!
久々…!「今の音」で聴きたいとずっと思っていたので、感無量…。轟音疾風に飛ばされた。なんか逆に覚えていないくらい…。
前回は2008年? でもこのたった数年で全然違う。彼ら自身も音も、回りの状況も。「新曲」と「昔の曲」がここまで鮮やかに無理なく繋がるなんて!それがdipの強みだと思うのだ。


POLYSICS登場】
惚けていたらヤマジさん、後ろを向いてゴソゴソ、、こちらを向いたらなんとビックリ、ヤマジさんてば「POLYSICSのゴーグル」をしてるじゃあないですかッ!!あの、ポリといえばのアレですよアレ!場内、一瞬え?と思ったのも束の間、大爆笑。そこへポリのフミちゃんとハヤシさん登場で「superlovers in the sun」!フミちゃんが唄うことで(ヤマソロの)「太陽の中の恋人たち」って感じでまた嬉しい!トリビュートだとかなり歌謡曲色強い感じがしたんだけど、dipの演奏下だとさすがにそこまで行かなくて。キラキラしてて愛らしかった。


【te'とギターバトル】
続いてはte'のギター hiroさんが登場で「it's late」、以前対バンしたときに「大ファンです!」とアツい想いを語ってくれたなあ。堂々と自らのフィールドでギターを掻き鳴らし、ライブでオナジミなこの曲の色を変えてくれた。その姿を見つめるヤマジさんのまなざしがとってもあたたかったのが印象的でした。ギター弾きながらあんな表情を浮かべたことかつて無いですよ!
アグレッシブな演奏を終え、握手を求めるhiroさんは髪で顔は隠れ気味だったけれど、緊張と安堵と彼らへの敬愛がいっぱいに伝わる表情が伺えて、とても素敵でした。


【リッキー、豪華なカラオケで唄う】
そして登場、ART-SCHOOL木下理樹さんで「no man break」、出番直前に袖から発声が聞こえてきたのですが(笑)、なんとdipの演奏をバックにひとり唄う(ギターも持たず!)という最高に贅沢なものでした。緊張が伝わってくるものの、それをしかと支えるヤマジさん。木下さん、自分が”ミュージシャン”になって人気を得て、10代の頃「引きこもっててもいいんだ」って思わせてくれた曲を彼らと共にやるなんて、相当に感激したことだろうなあ。アルビニな音の”今のART-SCHOOLでweekenderの楽曲を聴いてみたいです!


13階段への荒野】
近藤智洋さん登場、トリビュートではピアノでしたが今回はdipの演奏にボーカルとして参加。唄声が変わると曲の空気が全然変わるのだなあ。この曲の持つ力を再認識させられてしまう…。

ここで本編終了…もう少し聴きたいよう、、、


【驚愕のアンコール…】
で当然あるわけですが、ドラムにキューちゃんが座った!ええ!「faster,faster」の演奏が始まったら登場したのは、、、チバ!
その姿が「ツバの広いエレガントな帽子」に「花柄?のてろんとしたシャツ」に「白いタンバリン」、『70年代のロックスター』なものだから、どどどうしたの?と驚いてぽかーんとしてしまった。今、彼はこんな感じなのですか?えええ? で、このヒトが唄うともう、独特の世界観に変わってしまうのね。
それにしてもチバとヤマジが同じステージに立ち、dipの楽曲を演奏するなんて。
先日、「ポルノスター」と「青い春」を見た感想として

「青い春」はミッシェルなんだよね、やっぱり。青い焦燥感。そして刹那。切っ先。
「ポルノスター」はやっぱりdipだ、あの荒野をずっと走り続ける。今顧みると、「青い春」なミッシェルは解散してしまい、「ポルノスター」なdipは「ナイン・ソウルズ」を経て、今も続いている(しかも漸く歯車があった感じ!)ってことが感慨深い。。。
http://d.hatena.ne.jp/mikk/20120829/p1

と書いただけに、ことさら胸に響くものがある。


最後に、やっぱりコレだ!の「sludge」で大盛り上がり。
もっと!と再びアンコールをかけたけど、さすがにもう終わり。小野島さんがcureをかけている。

物販でTシャツを買った。ヤマジさんの絵、大好き。前買えなかったエフェクターのと今回のトリビュート記念のギターのと、2枚も。嬉しい。隣のファミマで「ガツンとみかん」を買って、食べながら駅へ向かった。すっきり、ああ、2012年の夏休みはもう終わり(や、ホントはまだ取ってないけど)、でもこれからまた何かが始まりそうな予感を秘めた夜。

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先輩ミュージシャンと共演して「年下」なヤマジさんを見ることが多かっただけに、今回「先輩」として接している姿はちょっと微笑ましかった。受け入れてるというか…本人はそのつもりはなかっただろうけれどかつては「拒絶」してる感じがあったように思えた。最近は対応に余裕があるというか、、。そういうのが「音」に繋がり、状況にも繋がるのだろうな、きっと。


音楽活動が「ビジネス」になったときに、「音楽業界でのビジネスマナー」が要求される局面があるのかなと考える。それに上手く対応出来るバンドは「声の大きな立場の人」によって波に乗れるのかもしれない。でもdipはそれを良しとしなかったと思う。だからこそ、紆余曲折ありながらも長く続けることが出来、出会った人によって自らの内が広がり、外へ繋がり、アマチュアリズムを失わないままプロフェッショナルな演奏を高めていくことが出来た。
今ここへ来て「ロキノン」なムードが高まっているけれど、今度の月曜は灰野敬二さんとセッションですよ!この振り幅!

それと今回、ステージ転換を眺めているとほんとうにたくさんの人によって作られているのだなあと思った。ステージで演奏するミュージシャン、裏方で働く方々、これだけたくさんの人の思いと力が込められているのだなあと思うと、こんなライブを開かせてもらえるなんて幸せなバンドだなあ。私も参加出来て嬉しい。「RELEASE PARTY」って言い方は馴染めなかったけれど(普段なら「レコ発」だし)、うん、確かに「パーティー」、「祭り」なライブでした。

12月7日(金)には渋谷WWW(ヤマジさんいわく「ワールド ワイド ウェブ…?」)でワンマン!「昔はよく聴いてた」という人も「今は仕事でなかなか見に行けない」人も、「最近気になってるんだ」という人も、みんな是非是非来て欲しいです!
http://doobie-web.com/event/121207dip.php


「ずっと続けていくこと」、なんて重く大きな言葉なのだろう。それを実証したかのようなライブだった。そしてまた続いていくんだね。【追記】今、「il faut continuer.」(ヤマジさんが時折リリースするCDRのシリーズ名)が「バルテュスの遺言で、続けていかなければ、と云うような意味」と呟かれて、ちょっと泣きそうになってしまった。