Hollowgallow release live

12月5日(火)渋谷クラブクワトロにて。9年振り!の新譜リリースライブ。
このメロディに、とか歌が、ギターが、ではなく、鳴っている音そのものにハッとして心を動かされる瞬間が多々あった。カッコいいとか痺れるとか、そういうんじゃなくて。外歩いててふと目に入った光と色に背筋が伸びる感じに近い。ジャンルとか楽器とかバンドを構成する何かではないところでものすごく胸に刺さった。
3人だけの音は地に足が着いた印象を受けつつも、新しい場所へ導いてくれ、お馴染みの曲は今なお鮮烈で深化して、でもエバーグリーンでもあった。

93年UKPからリリースの1stに魅せられて以来30年。途中諸々ありつつ2023年大先輩と後輩をゲストにUKPから新譜リリースなんて。心身の健康と継続は力なり。久々のクワトロはぎゅうぎゅうのqueよりずっと見やすかったし、GOK SOUNDさんのPAが見事で爆音轟音でも歪みでも隅々まで繊細な響きが気持ちよく、当日も翌日も耳や体に疲れがなかった。


開場時のSEはヤマジさんが前に挙げてた北京のバンドRunRunRun、バンド名も曲もヴェルヴェッツ!でカッコ良い。
HOON | Run Run Run | Maybe Mars


*太字は新譜楽曲
1.『krauteater』 2015年1月UGXでの"最近のヤマジさんの好みがそのまんま現れた即興性の高い曲"*1は以降のライブでは欠かせない曲になり、アラバキやCAMERA来日公演などを思い起こしながら、クワトロの空間がキラキラ多幸感に包まれ『生への歓喜』を感じて(!)、なにこの明るさ!! dipなのに!!!グッときて泣けた。早すぎである。(これはその日の訃報とリンクした部分もあるかも)

2.『Hasty』、あらロッキンなこっちに戻るの?と思いつつ、場内どんどんヒートアップ。巻き舌ぽさからキレある切り口に変わった。

3.『Labo』蓄熱な感覚でfunmachineあたりを思い起こしつつも一筋縄では行かない展開が変な曲だなあ(褒めてます)

4. ひさ子さん登場で新曲かしらと思いきやまさかの『Pink fluid』・・・!!! 魚さんのキーボードも加わってマジで"Pink Floyd"に。重厚だけど浮遊し変容する。そして後半の「ねじれた〜」でやっぱり涙腺崩壊。

5.ひさ子さんと『The place to go』、当初の後半突如性急になる部分カットが悲しい(しつこい)けど、ギターの凄みにメロディの邦楽的切なさが重なり叙情性が感じられるのがヤマジさんらしい。

ひさ子さんハケて6. 『Traffic』これもまたdipの一面だなーって3ピースバンドな曲。

再びひさ子さん登場「シューゲイザーしようか」とヤマジさんが切り出して7曲目 『For never end』既にライブで何度か聴いているけど、今回は豪華仕様の煌びやかさ。

8.『Nicked rakeNick Drakeと空見しそうなこの曲は魚さんのアコーディオンを加えたデカダンでクルト・ヴァイルみたいな、"kiss×××"の一話を思い出す匂いがするのだ。

9. 『Perverse』だったか・・・終盤のギターがまた素晴らしく、エフェクトかけた残像音がステージを巡り美しかった……

10. 『Slan』ソリッドなギター満喫。これもまたdipらしさ。

11. 『Self rising flower』 Reckさん、ギターで登場。しかもヤマジさんのジャズマスターで!即始まった1音目から次元が違った。なんだあの音!!キレ味なんて言葉で片付けられない。凄み厚み重みに口あんぐりして動けなくなった。「まだまだじゃの」と言われてるみたい。

12.『Hollowgallow』自身のギターに変えてからの、レック塾。会話みたいな問答みたいな掛け合い。3人共キャラ的に喰らい付いて戦う感じは無いけど(苦笑)、レックさん自らナガタさんとナカニシさんに近づいて、からの〜ピンスポットでソロ!があったのも印象的。演奏にどんどん熱量が上がり、会場の熱も昂り、これで幕、かのような終焉。2017年11月chop"ジャーマンな反復な楽曲〜後半、中近東なメロディが入り込んでオオッ?!と反応して身を乗り出した"*2以降、今日に至るんだなあ。感無量・・・

そしたらですよ、13. 『Garden』14. 『Delay』心の中シンガロングで聴きながら青春だなーと思った。それは若き日々ではなくて、今もこの感覚を持ち得ていることがすごいなって、そういう青春。ひさ子さんも嬉しそうな面持ちだったけど、それを見守るヤマジさんも嬉しそうだった。

15. 『Slower』あの頃の裏テーマ曲イメージはひさ子さん加わってメリハリあるしっかりした仕上がり。

16. 『il faut continuer』 長年のキーワードがついに楽曲に。この冠でCDRシリーズ始めたの0年代頭じゃないっけ。姫路でのライブで最初販売したような記憶。。。そんな時の流れを感じさせる歌詞。重くも軽くもない、アップテンポでもバラードでもない、わかりやすい決意表明にしていない。

17. 『Eva』ライブで聴いてたときから頭に残る"夢を見るまで"のリフレインはギターの閃光を潜り抜け暗いトンネルの中に消えていき、これからも夢ではないこの道を進むと宣言する。盛り上げ調では無いこの曲であっさり本編終了・・・


◆当然アンコール
ひさ子さん登場、『冷たいくらいに乾いたら』!!!そして『Lust for Life』イントロから完コピの圧巻で、鳥肌立つ。若かりし日弾きまくったんだろうなと泣けた。《ひさ子さんとdipの曲やった記録→初回(2017年)diptoddleの対バンで「ライラックアコーディオン」、(2018年)JUST FOR ONE DAYで1回目「冷たいくらいに乾いたら・空に揺れたい」 2回目「human flow・オモト」》今日はdip愛とギタリストとしての矜持が強く重なって、凄まじい音だった。ひさ子さんは美しくてかっこよくて愛らしくて素敵。(向井さんと長年やってればヤマジさんはめんどくさい先輩ではないのかも、しれない・・・)

◆アンコール2回目。
最後3人で。ヤマジさんが「ナガタッチお願い」と呟いて、『Break on through』。大団円でも果てでもない、今ここで鳴っているのは、この先へと続く音だった。


凄まじい轟音が終わった後のフロアに鳴り響いたのは、"あの声"の、『FASTER, FASTER』 ああ! 終わるまで立ち尽くして聴いていた。


dip tribute -9faces- RELEASE PARTY - 音甘映画館
思えばdipのクワトロ、2012年のこれ以来か。「it's late」を演奏したte'のギター hiroさんも、ベラさんも本庄さんも、もういない。


壇上でゲストの3人に対して観客側へアプローチしないのもヤマジさんらしい(苦笑)だけど、そもそも大先輩後輩をゲストにすることがこれまでに無い心境だねえ。。。前作2014年4月以降を振り返ると、ヤマジさんの多方面な活動に驚かされる。ヤマソロ「oversleeper」リリース&ライブLaboシリーズや灰野さんを始めとするセッションやモモさんや近藤さんたちとの交流、対バン。uminecosounds、YESEYSESY、zzzoo、YTS、Zombie don't run、3月のバンド(ってどれも今活動してない・・・YESEYSESYを深めて欲しいんだけどな)Missing Heads、Shinya Oe & Super Birds、ヤプーズ。映画「PLANETIST」に舞台「怪獣の教え」。コロナ禍ではライブが出来ない!とヤキモキする方々を尻目に「やっと家に篭ることが許された!」と変わらずに我が道を突き進んでいた。


いつでも、何があっても、圧倒される音を演奏し続ける。il faut continuerとまさに思わされる一夜だった。
次のライブは2024年3月25日、ヤマジカズヒデ58歳の誕生日。会社員には年度末、異動発表、月曜日&次の日絶対休めないと四重苦ですが行けるように鋭意がんばりたい・・・

*1:当時の記録より

*2:当時の記録より