古き良き、記念列車と奈良井宿

松本駅から電車に乗って奈良井へ行く事にしました。奈良井は中山道の宿場町で当時の町並みが今も保存されています。
駅のホームへ向かうとなんだか人でいっぱい。あれれ…?と思ったら

わーーーー!記念列車じゃあないの!!

ピカピカキラキラと輝くチョコレイト色の美しい車体。
篠ノ井線松本駅塩尻駅、明科駅の開業110周年を記念した 快速『篠ノ井線110周年号』で、ちょうど行われている出発式を背にたくさんの人が記念号を撮影していました。勿論私も「わあああああああい!」とパシャパシャ。なんてタイミングいいんだろう!
みんなで拍手をして手を振りながら『篠ノ井線110周年号』を見送る。ホームにいるひとも列車に乗るひともみんな、にこにこ笑顔。信州の秋の澄んだ空気のなか、光を放ちながら走る列車はまさに希望に満ちていて、ちょっとウルッときた。


そして普通列車の中津川行きに乗車。ガタゴトと出発。程なくして塩尻駅、先ほどの記念号が停車していて、こちらでも出発式が行われている。松本へ折り返すのか。アルクマがいる!松本駅にはいなかったのにッ!会いたかったよーーーー。
 ガラス越しだけど、、ああっかあいいねえ。
 塩尻はワインの産地ということでホームに葡萄棚が…

再び出発、周囲は次第に緑を帯び、列車は山間を抜けて走ってゆく。


そうして到着。奈良井駅。駅舎も100年ほど前からのものとのこと。鹿児島旅での嘉例川駅を思い出した。駅を出てすぐ目の前から、宿場が並ぶ街道が続いていた。

駅はこういう通りから離れた場所に作られるのが定説と思っていたので、ちょっと驚く。この重要建築物群保存地区は中山道沿いに南北約1km、一直線にずっと続いていて、緑の山々と青い空を背景に風情のある佇まいの家屋が建ち並ぶ姿は実に美しい。各家の格子には秋の花々が飾られていて、そのこっくりとした色がまたよく似合っている。歩いていてさっぱりと、しゃんとした気持ちになるなあと思っていたのだけど、それは各家々の姿がそうさせるのだと気がついた。昔のままの宿場町がそのまま残されており、きちんと手入れも行き届いている。荒廃したところ(良くある言い回しだと鄙びた、悪く言えば朽ちて汚い)もなく、かといって小奇麗に整えてツルッとセットのように誂えていないのだ。また、下品な土産物屋や上りなどもあまり目につかず、飲食店などの入り口も品よく観光客を出迎えてくれる。今まで各地に残る「古い街並み」をいくつか歩いたけれど、観光地化然としたそれらとはちょっと違う印象がある。
奈良井宿のようにきちんと、他からの”ノイズ”が入らない形でこれだけの規模の街並みを保存していくことはとても大変だと思う。恐らくは大変云々の前に、奈良井への誇りがあるのではないだろうか。山間の街道沿いの歴史ある宿場街であるこの街に生まれた人々が、故郷に誇りを持ち守りながら暮らす事を、ことさら仰々しくするのではなく、日々淡々と楽しみながら過ごしていく。この街をよく知っているからこの街によく似合うことだけを自然にしている。塵のない軒先の花々にその姿が伺えるように思う。

途中、道が鍵の手になっているところがあって、更に進むと西洋建築が1軒だけあったりして、一番奥が神社。奈良井をずっと見守ってくださっているのだなあ。

立派なご神木。ここでクルッとUターンして再び同じ道を歩くのだけど、気になる路地に入ってみたり

すると線路があり、踏切が当分ないのだけど線路の上を横切っても良いみたいで(地元の人は)、ひょいっと渡ってみた。そしたら目の前に、川!

薄く高い空、白く光る太陽、緑に挟まれた川が輝く。沿道ではところどころ赤く色づき始めている。

なんて気持ち良いのだろう!この風景を思い出すと今もまだ、胸がきゅっとする。