旧篠ノ井線廃線跡敷を行く


今回の小旅行は具体的に何処を回るか決めていなく、松本に着いてから”そうだ、ここに行こう!”と向かったのが「篠ノ井線廃線敷」です。
明治35年に全通した旧国鉄篠ノ井線ですが、昭和63年に西条駅と明科駅間が新線に切り替えられたために廃線となったこの区間の線路敷を新たに整備し、最近ではトレッキングコースとしても使われているようです。かつては鉄道紀行にも描かれたこの跡地を、秋晴れの空の中、歩いてみることにしました。

松本駅から篠ノ井線で15分ほどの明科駅から出発。5~6キロほどの距離を往復になりそうです。

線路沿いを山に向かって歩いていくと

トンネルが。電車こないかなーって思っていたら、

あっ!昨日の記念列車!!わー、なんてタイミング!!

犀川から分岐した会田川と山の稜線が美しい。

しばらく家屋が続き、神社がありました。氏神様がいらっしゃるこの神社では近くで催しものがあるらしく、地元の人でにぎわっています。

この脇に駅名標を模した案内板が。そのまま進むと途端に景色が変わりました。

一本道、だけどこれは確かに単線の線路跡だ!導かれるように歩いていくと

トンネル!


いざ、中へ!

うわ!センサーついてるらしく、明かりが灯ったよ!(後で知ったのだけど、長い間鉄扉で閉ざされていたトンネルを数年前に整備したそう)情緒にちと欠けますが…。
125メートルほどのトンネルを抜けると

ああ、秋だなあ。やわらかな光、すこしひいやりとした感触、足下の枯れた落ち葉を踏みしめる。






かつての日々を忍ばせるものがいくつも残っています…。



踏切!!もう、電車は通らないのに。

ちょっと開けた地になりました。


山間の鉄道なので確かに土砂崩れなどの自然災害に苦慮されたことでしょう。線路沿いにずっと続くケヤキの木は鉄道防備林としての役割を持っていたようですが、廃線した今は散策する人々へ気持ちよい風を送りこんでくれるのです。



なんなんだ、この寂しい公園は…

手書き…味がありすぎる。平成7年作成て、うそぅ、昭和っぽいよ。。。

信号機!

その先には住居が数軒あり、

およ、猫!

こちらに気付いてのっしのっしと歩いてきました。しばし歓談(妄想)し、再び線路なき道へと進む。


不意に電車の走る音が聞こえてくるような、、、普段「山列車」などと称する車窓風景を歩くスピードで眺めている。


木々の向こうにトンネルが見えてきた。

明治30年に開通した全長53mの総煉瓦造りのトンネル。なんて重厚で趣きある造りなのだろうか。




短いので向こう側が見えるくらいだけど、蒸気機関車の煤が黒くついていたり、積み重ねられた歴史が伝わってくることで、その長い歳月を渡り歩いているように思えたのでした。


ああ、今も列車が走ってきそうだ。見えない列車に手を振る。




日本国有鉄道」!!!

潮沢信号場跡。かつてはスイッチバック式で電車が行き交う要所だったところ。

擁壁も残っている。緑に苔むした姿。
さてここで引き返すことにします。


帰りはゆるやかな下り坂になるので随分と楽です。さっき黒猫に出逢ったあたりに来ました。あいつ、まだいるかな?いないか…と思ったら

いたー!こっちにきたー。

キラーン。

ごろごろごろ(チャプターハウスのジャケ?)

んじゃね。


深々とした緑のなかへ。





瓦屋根が覗く風景に戻ってきました。

片道5キロ強を往復し約3時間ほど、秋日和な日差しが少しづつ色づきはじめた木々の葉の間から降り注ぐ気持ちのよい風の中、列車の走行を足元に感じながら歩く道程は、いつもの散策とは異なる楽しみに溢れていました。この山間に線路を引くことは非常に困難であり、運行にも日々苦労が絶えなかったかと思います。携わった方々の尽力のおかげで沿道の人々がどんなに助かったことか。廃止されて閉ざされた線路が愛好家のあいだで密かに語られ、今は散策道として気軽に楽しめるようになんて、時代の流れの面白さだなあと思うのでした。トンネルもキノコ栽培に使っていた(!)こともあったよう。
敷石がゴツゴツしている道中だったので、さすがにふくらはぎが痛くなりました。



「ちょっと遠くに行きたいな」で始まったこの小旅行、松本は訪れる度に発見があったり、毎度おなじみのところへ行ったり、、、川と山のある素敵な街だなあと改めて思いました。今回の旅のキッカケには実はもうひとつ理由があって、それは次回に記すとしてひとまずこれで。