終わりの後に

晦日の喧噪と静けさのあいまに知った大瀧詠一の死去には驚かされた。愛情と敬意と知性を持ちながら、軽やかで照れ隠しのようなユーモアを持つ彼の音楽は美しい旋律と冒険に満ちていた。しかし私は特に思い入れがあるわけではない。それはきっと時代の故もあるかとは思う。私が音楽を聴き始めた頃はUK/US ROCKに夢中で、彼は「上の上の世代のミュージシャン」という印象だったし、テレビ等で使用されることも多いので敢えて聴くことに抵抗があった。そしてフリッパーズはそういう世代を蹴散らしていた。だから小沢くんのソロは衝撃だったし、今は小山田くんがそちら側にどっぷりなのは、ちょっちょっと!という気持ちでいっぱい(す、すみません)。キリンジの登場あたりで「再び発見」されて以降の世代は、素直に聴くことが出来て羨ましい。
今我が家にあるいいスピーカーで聴くと、馴染みある心地よさとともに豊かな音が広がって、新たな粒をたくさん拾うことが出来る。そうやって何度でも彼に出会うことが出来るのだ。
そして年始。フラップノーツの閉店の話には声を挙げてしまった。フラップノーツはとても良心的なレコード店だ。価格もむやみに高くすることはなく、他の有名店よりいつも安かった。そのうえ状態も良く清潔で見やすい店内にジャンル分けが適切適度に陳列されていた。三軒茶屋という場所も絶妙でいつ行ってもいい雰囲気だった。店の人が音楽をとても大切にしていて、誠実に向き合っていることが伝わってくる。その静かな佇まいが好きだった。昨年秋にテナントビルが建替えのため一時閉店、心配したけれど移転となり、新たな店も今までと変わらない印象で安心した矢先だった。唐突な展開に何か特別な理由があるのではと思わざるを得ないけれど……。こうやってまたひとつ、店が街から無くなるのだなと胸の奥がキリキリしてしまう。それでも今年も、たくさんの音にぐっとくる、そんな出逢いがきっとあると思っているけれど。