自由学園 南沢キャンパス

ひばりヶ丘にある自由学園オープンキャンパスに行きました。大正10年に羽仁吉一・もと子夫妻が目白に創立後、広大な土地を求めて昭和5年に東久留米の地に移転し、遠藤新を建築家に迎えて完成したのがこちらなのです。



まずは男子部体操館から。この開放的な雰囲気にいきなりぐっと来た。上級生が下級生にサッカーや体操を教えてあげる姿が素敵でした。

ここから奥に進んでいくと、目の前に広がる青々とした芝生に息を呑む。

子どもたちが転がりまわってワイワイしてるのを大きく受け止めてくれる。この学園の象徴とも言える空間ではなかろうか。

女子部体操館。緑と地続きな建物が素晴らしい。



女子部食堂。シンメトリーな美しい外観で内部にもハッとするの!

天井が星空のよう。

モダンだなあ。




柱だとかちょっとしたところも手が込んでいる。






建物と建物を繋ぐ回廊も出逢いに満ちている。

ぐるりと回って、先ほどの広場へ。思わず声が出てしまう。



初等部食堂。趣きたっぷり。

緑が瑞々しい。

ここが学校ということを忘れてしまう。



初等部校舎。ここが一番古い建物で、日本ならではの木造建築校舎のスタイルを継承している感じ。




こちらは図書館で、息子である遠藤楽が手掛けたせいか時代の所以か、若干趣きも異なります。


終始、目を見張る空間がそこにありました。遠藤新による建築の美しさを大切に維持しながら、広々とした緑を子供たちが走り回っていてとても素晴らしい学校でした。創設者の意志が敷地全体に感じられるのが凄い。施工主として学校の理念をきちんと伝え、費用をかけて、建築家と意識を共有しながらつくったのでしょう。遠藤新は高い要望に答えながら自身の個性も充分に発揮しています。そしてただつくって終わりではなく、ここで学ぶ子どもたちに作り手の想いが継承されているのです。(追記:思えば、遠藤新は師匠であるフランク・ロイド・ライトの思想を継承しているのだなあ)

室内の椅子などの調度品は遠藤によるオリジナルデザインですが、今も大切につかわれています。キッチリとした線を持つ建物は隅々までピカピカで、驚くべきことに維持管理は基本的に生徒の手によって行われているそうです。広大な敷地が持つ高低差と植生をうまく活かした空間づくりにより、どこまでも広がるのびやかな空間で駆け回る子供たち。遮る高い建物も無いのです。


古びて使いにくい建物を壊し、広い芝生や周囲の雑木林も一掃して一部を売却し、超高層の校舎を建てるーーーなんてことはせず、2015年の今も建築当時の姿を自分たちの手で頑ななまでに守っていること。そこに創設者である羽生夫妻の教育理念が感じられます。

昨今の日本の、こと公共施設の建築は一大プロジェクトになってしまい、施工主と建築家と使用者の意識がバラバラで、更に言うと意識など無いまま、本来の意味を考えることも忘れ、個人の利で進んでしまうように思えます。そんな行ないをしている人々が自由学園を見ても何にも感じないのでしょうね。