憧れの国立京都国際会館 見学会

国立京都国際会館は「日本で最初の国立会議施設」建設のために1963年に行われたコンペにて、大谷幸夫の案に決定。1966(昭和41)年5月21日に開館されました。
www.icckyoto.or.jp

1997年 地球温暖化防止京都会議の「京都議定書」が採択された会場として良く知られていますが、日本のモダニズム建築として高く評価され、私は7年前に観に行ったことがあるのです。そのときは外から眺めるのみ・・・
国際会館と鉄博 - 音甘映画館


前回、Cornelius 夢中夢 Special Live Set - 音甘映画館 にてアツく語りましたが、『あの"国立京都国際会館"で"Corneliusのライブ" & 京都モダン建築祭にて館内特別見学』だなんて、私のためのイベントなの?!と錯覚し(え?)東京から馳せ参じ、①大会議場でのライブ鑑賞 ②ロッジに宿泊 ③館内見学 と2日間に渡るスペシャルコンボを果たしたのでした。

国立京都国際会館 | 京都モダン建築祭



外観1

外観2


社殿のような日本の伝統様式をモチーフとしたその建物に圧倒されます。

・大谷氏の手記には、「比叡山を背景にした穏やかな山間の宝ヶ池の風景に、古都京都の風情を感じ、その風情を損なわないよう、自然の佇まいに設計の枠組みを委ねた。」とあります
・山肌に迫っていた議場の壁面を内側に傾け台形とすることで、必要平面積を確保しながら建物のボリュームを削り、周辺の山々を圧迫することを緩和しようとしたのです。
『自然が育んでくれた建築』
国際会館のモダニズム建築 | 国立京都国際会館


いよいよ中へ!

入口通路

かかかか、カッコイイ・・・。各国の受付を兼ねた長い通路は異世界への滑走路のようでドキドキします。そしてラウンジへ。



天井照明の美しさ。煌びやかだけど落ち着いた空間の広がり。逆台形の形状を持つ建物の入口が上部であり、苔色の絨毯を敷き詰めた階層がゆるやかに繋がりながら降りていくとロビーとなり、大会議場入口に到達します。


他の鑑賞者が写ってしまうので写真は控えたのですが、構造については先述のこちらの記事より以下を参照ください。

「フォーマルなものが会議場。ラウンジはインフォーマルな会議、会談、交流が行われる広場のような空間。」
『ラウンジのデザインとその役割』国際会館のモダニズム建築 | 国立京都国際会館

公式の場ではない合間の役割と機能が空間に「デザイン」されていることが素晴らしい。


さて、大会議場内へ。

PAから望む

4階部分までの高い吹き抜けを持つ大空間。入った途端高揚とともに背筋が伸びる美しさ。

最上段からの眺め
美しい横顔
ステージからの景色!

昨夜のライブで2時間見惚れていたステージにまさか自分が立つなんて。


ステージ左右にある、山の連なりのようなシルバーの飾りは建物自体の台形と呼応したアクセントではなく、『万国旗を掲揚する旗竿』であり、煌めきを与える天井の円盤は『照明のための反射板で、天井に露出した梁の中央部を隠蔽』する目的があるそうで、機能をデザインへ昇華しているところもすごいなあ。


ダイナミックな巨大建造物でありながら、細部にも繊細にこだわりがあり、とても素敵。

ラウンジに置かれた真紅の色と形が素敵なこの椅子など、照明や家具の担当に剣持勇を起用。

構造体はプレキャストコンクリートで荒々しい肌合いにカバーされていました。これを見て我々は、ラウンジの椅子の仕上げに外側は木目のはっきりした厚平のシェルターの役目をする木材、その内側に柔らかい布地のクッション材で人間を包み込むことにしました。
建築と家具 | 国立京都国際会館


壁面の肌合いはコンクリートのツルッとした表面を手で削って表したもので(この広さ全てに!)、インテリアデザイナーが現地を見てインテリアを決定することは勿論、建築家が調度品にまで手をかけることは今の建築ではあり得ない。

>全工事費の1%前後を美術家との協同の経費に充てることが条件に明記されていました。国立京都国際会館の建築が現代美術との統合にも貢献することが強く期待されていた
建築と美術の協同・連携 | 国立京都国際会館


60年代という時代の熱を感じる。確かに当時は公共建築ラッシュでモダニズム建築家が多く登用され、ロビーに美術家の作品が置かれることが多かった。仕様書にこんな条件が記載されているなんて。


菅井汲や篠田桃紅など当時気鋭の作家の他に、若い美術家たちで形成した「Association des Artistes pour l’Architecture」というグループを作り、ステンドグラスやレリーフを多数共同制作。

この試みは大谷幸夫の弟が彫刻家であり、アドバイスを貰った模様。著作権はどうなるの?と今思うとありますが、こういったチャレンジの場を作り出す心意気もまた素晴らしい。

設計・インテリア | 国立京都国際会館

アートツアー | 国立京都国際会館

館内の調度品や美術品の数々と建築の見どころが解説されています。


https://www.icckyoto.or.jp/50th/gallery.html

館内のあらゆる箇所を写真で観ることができます。


京都洛北の山並みを背景に宝ヶ池を望む自然豊かで穏やかな土地を活かした庭園もまた素晴らしい。


緑に囲まれた立地を壊すことなく、周囲と調和された建築デザインこそ、「国際会議の場」である志を体現し、緊張感ある会議を離れてリフレッシュし会議を円滑に進める憩いの庭として建物と同様の存在感を持っています。

日本庭園 | 国立京都国際会館



国立の国際会議場ということで維持管理がしっかりと(全国各地の県営モダニズム建築の哀しき現状・・・)、設備改修も段階を追って実施、新館など増築も今なお行なわれていますが(新たな増築計画看板もあり)、計画時に「将来的な増築を行なえること」も盛り込まれていた模様。敷地内を巡ると、建物の外観で建設年代が伝わるのも面白いです。
・2期本館増築       開館:昭和48年 設計:大谷 幸夫
・イベントホール・ロッジ 開館:昭和60年 設計:大谷 幸夫・大谷研究室
・アネックスホール      開館:平成10年 設計:大谷 幸夫・大谷研究室
・ニューホール         開館:平成30年 設計:株式会社 日建設計 
施設沿革 | 国立京都国際会館




この眺めは宿泊したロッジの部屋から。

昭和な雰囲気を残しつつ、きれいで良いお部屋でした。


ホテルに付き物のメモ帳、オリジナルなの〜〜。素敵。
京都繁華街の喧騒を離れて、静かで緑豊かな良いホテルだったなあ。朝は館内の見学会前に周辺をお散歩するのも楽しかったです。




〜〜〜  1週間後

東京 湯島にある 文化庁国立近現代建築資料館にて開催中の「10周年記念アーカイブズ特別展 日本の近現代建築家たち」で、国立京都国際会館 設計協議 応募案図面が拝めたのです!大谷さんの図面と記憶の建物を重ね合わせる楽しさったら。大髙正人さんの図面はその後の千葉県立美術館や三春交流館を思い起こす平面な広がり。菊竹清訓さんは竣工したばかりの(しかし今はもう無い・・・)出雲大社庁の舎を踏襲した荘厳な出立ち。大谷さんが選出された理由の一つに「内部空間の使い方」があり「動線の良さ」がポイントだった模様。実際に会場を歩くと確かに納得します。
https://nama.bunka.go.jp/exhibitions/2307


参照:神谷武夫さん〈古書の愉しみ〉より『 国立国際会館 設計競技 応募作品集 』http://www.kamit.jp/15_kosho/45_kokusai/kokusai.htm