Cornelius 夢中夢 Special Live Set

これは2023年11月3日(金・祝)に国立京都国際会館にて行われた、AMBIENT KYOTO 2023 presents Cornelius 夢中夢 Special Live Setにまつわる、長い長いお話です。

私は音楽と共に建築鑑賞も大好きで、特にモダニズム建築が好みなので前川國男設計 東京文化会館(竣工1961年)でCorneliusのライブをいつか見たいなあと願っていました。
建築について | 東京文化会館
これは前口上。


「AMBIENT KYOTO」 アンビエントをテーマにした音・映像・光のインスタレーション展が10月6日〜12月24日まで開催。京都新聞ビル地下1階に坂本龍一 + 高谷史郎、京都中央信用金庫 旧厚生センターにコーネリアスバッファロー・ドーター山本精一を迎え、音と映像、そして光のインスタレーションが展開されます。
https://ambientkyoto.com/about


この企画、京都だし・・・と遠く考えていたのです、が、


・8月29日 この企画でCorneliusのライブが大谷幸夫設計 国立京都国際会館(竣工1966年)で開催されると知り昂揚。前川國男と同じくモダニズム建築として名高い傑作のここで!何年も前にせめて外観だけでも観たいと遠路眺めに行った、国際会議の場で。えー、ここでライブなんて出来るの!!しかもCornelius!!!ギャー。
コーネリアス(ライブ)の参加が決定。 - AMBIENT KYOTO 2023
(余談:ウルトラセブン第14・15話「ウルトラ警備隊西へ」でキングジョーに襲われた六甲防衛センターのロケ地でもある)


更に!ライブ翌日は京都市内の近現代建築特別公開イベント「京都モダン建築祭」でここが見学日であると知る。
国立京都国際会館 | 京都モダン建築祭


ええええええ!!!


とはいえ、コロナ禍以降旅をしていない身に、オーバーツーリズムな京都、それも秋の祝日ではさすが心配、、、しかし、エイヤ!と新幹線の席を押さえ、宿は通常価格で取れるのか?!>「国際会館に宿あるじゃん?」とY氏が言い、ソレダ!と電話予約。これにより、京都国際会館Corneliusライブ&宿泊&建築見学が決まったのであった。



・9月5日 チケット発売日、ドキドキしながらPC前待機し、販売開始。座席表から席を選ぶ方式(それも普通の会場ではないから席列が変)に驚きながらも無事取れてホッとしたものの、システム障害でダブルブッキングが判明。デジタルチケットで表示された席が一夜にして違う番号に変わっていた・・・。そんなことある?!結果的に同じ列で若干ズレただけで良かったけど、遥か彼方の席に飛ばされた人もいるようで先が思いやられる・・・
お詫びとご報告:チケット予約システムの不具合について - AMBIENT KYOTO 2023



・10月13日 先に取っていたCornelius横浜公演、まさかの人生初良席。
Cornelius 夢中夢 Tour 2023 - 音甘映画館
その後自分にも身の回りにもいろんなことが立て続けに起こり、クラクラ+不安のまま当日。無事に京都に到着。


〜〜〜 さてここからが当日のお話し 〜〜〜


11月3日 烏丸線終点の国際会館駅下車。まずは宿泊施設のロッジにチェックイン。昭和でアナログなホテルスタイル、カードキーじゃない鍵久しぶりだよ! 荷物を置き、手ブラでメインホールへ。わーいわーい。



夕方の光がきれいな時間帯で良い感じ。遂に内部へ!建物自体の話は別途。



受付でスマホ出して因縁の「デジタルチケット」を見せると「紙のチケット」と「お詫びのステッカー」を貰う。結局日本の世の中は紙支配ですよ・・・。

座席は照明付テーブルが2列ごとに設置、会議では4人1組なのね。で、席番はネット上の座席表とも違ってたし、後列の人が間違えて座っていたり案の定な状況であったものの、いよいよ開演。


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Corneliusの演奏を聴くライブではなく、Corneliusの音楽が鳴っている空間を味わうライブだった


遂に憧れの館内に入った。通常のホールやライブハウスとは違う背筋がシャンとしつつも心が蕩けるような感覚。その時から今日のライブは始まっていて、夕暮れの開演までの時間をロビーや庭で過ごす時間もその一部で、ドキドキはホール内でSEとともに更に高まり、幕がない今日の会場で立ちこめた霧が晴れると彼らがいた。いつものOP"で開始、ふわりと魔法にかけられ高鳴った感覚をずっと維持しながら霧に消えて本編終了、アンコール最後の「続きを」の切なさと諦念を包み込んだやわらかい光が美しくてやっぱり泣いてしまう。


横浜では演奏をガン見状態の距離だったので今日は映像との構成を楽しむつもりだったけど、全方向からの光の演出が凄まじかった。台形をモチーフにしたシンメトリーな構造と高い天井の真ん中の丸いオブジェは極めて音楽的な形で、近未来的なクールで異質なテザインと親和性のあるCorneliusの均整の取れた音と制御された光線がホール全体に共鳴し彩り、満たすことで産まれた「美しい空間」を目と耳と皮膚で感じとった。この一夜だけに存在した、儚くて永劫に残るまさに「audio architecture」だった。

www.icckyoto.or.jp

↑メインホール内部は是非こちらを参照ください。


「audio architecture」という言葉は元々、ショーン・レノンCorneliusの音楽を語ったワードで、それをヒントにして中村勇吾さんがディレクションした展示だった。(そういえば会場は安藤忠雄設計)
21_21 DESIGN SIGHT | 「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」 | ディレクター


Corneliusの音楽は、小山田圭吾の音楽偏愛と知識・演奏技術・センスの結晶であるとともに、堀江博久をはじめとする演奏家たち、プログラマー美島豊明、エンジニア高山徹、映像作家辻川幸一郎など類まれな技術を持つスタッフの力とともにある。
建築物も建築家の名前が立つけれど、構造設計などスタッフの力が無いと成り立たない。京都国際会館大谷幸夫の設計だけど、剣持勇によるインテリアに菅井汲の絵画など、大谷幸夫が託したディテールもあってこそで、社殿のような圧巻のスケールある存在感を持ちつつも周辺の山々と調和した建築物であることがすごい。こういうところにCorneliusの音楽との共通項を感じる。

枯れたと自称した「mellow wave」の境地からあの騒動を経て最近続いた訃報により、Corneliusの姿勢に新たな意味が生じたのは確かで、その破片を感じながらもエンターテイメントで祝祭感溢れる演出はほんとうに素晴らしい。今回の「Special Set」と称されたライブは京都国際会館だからこそだし、すべてはこの限りで煙のように消えていくけれど宿った感情は残る。人もいつか消えてしまうけれど誰かのなかで生き続ける。音盤も建築物もずっとあるものだけど寿命があって、でも人が大事に維持すればあり続けることが出来るのだ。


セットリスト
01.OP
02.火花
03.変わる消える
04.Too pure
05.point of view point
06.Audio architecture
07.Helix/spiral
08.Another view point
09.Tone twilight zone
10.Drop
11.Surfing on mind Wave pt2
12. 夢の中で
13.蜃気楼
14.霧中夢
15.Wataridori
16.Cue
17.環境と心理
18.あなたがいるなら
19.無常の世界
EN.Breezin'
EN.未来の人へ
EN.続きを


この会場じゃ映像ちょっとアレでしょ・・・と思ってた「Another view point」はここで映ると教材のようである。夢中夢ツアーと選曲同じ?かと思ってたら「Tone twilight zone」、嬉しい。場内をクールダウンさせる。映像も素晴らしいなあ。

www.youtube.com


「Surfing on mind Wave pt2」も!前回のツアーの目玉的演奏だったけど、深度が研ぎ澄まされて格段に良かった。これや「Another view point」の仕上がりに比べると「霧中夢」はまだ途中の印象はあるかも。ちょっとしたミスも含めてこういうところにもライブの良さがある。


それにしても国立の国際会議を行なう場でライブ、アンビエント京都という企画あってこそだし、予算や申請許可などスタッフさんも大変だったことでしょう……。観客としては机があるライブは当然初めてだったし、机上のライトも演出でつかう心意気と設備面にも驚きました。


17時開演19時閉演。このまま隣接のロッジに戻り、市役所付近の店で事前に買っておいた京都箱寿司を食べたのである。こんなライブ、初めてよ。最高。



そして、翌朝。
京都モダン建築祭 特別公開にて再び会館内部へ。



メインホールのステージに上がり、ステージ上から客席側を見渡す・・・!! 昨夜小山田くんが観た景色がこれ・・・!!! 小山田くんが立った場所に私も立ったのだった。ああ、なんとも不思議な気分。(次回「国立京都国際会館 建築編」へ続く!)