ヤマジカズヒデともう寝た人たち / 下北沢440

金曜の雨降りの日。今年リリースされたソロ・アルバム「over sleeper」発売記念ライブ。
1曲目が新作で一番好きな「宙を撃て」だったので、準備が出来なすぎてうろたえた。ゆっくり旋回して落ちていく、重くダークなこの曲がまさか初っ端とは思ってもいなくて、深みに入っていけなかった。今回のバンドサウンドともまだ馴染めなくて暫くは違和感があったのだけど、バンドメンバーが壇を降り、「hypnopedia」をヤマジさんがひとり演奏していたところに再び3人が入ってきて、コーラスを入れながら演奏に加わってきたときに痺れた!こういう感覚が、もう、たまらなかった!
アンコールでは「ハルシオン」と「blue bus」。山本達久さんのドラムと石橋英子さんのフルートによって新たな魅力が生まれていた。須藤さんは豊かなベールラインを安定して奏でる。ヒリヒリした若き日の唄が新たな仲間とともに新しい解釈で今紡がれるのだ。歳を重ねるってこういうことなんだな。掌に大切に包み込んだままではなくて、他者とつくり上げる音がそこにあった。

須藤くんの「山に篭ってレコーディングして遊びませんか?」と云うメールから今回のアルバム制作は始まった。
http://ukproject.com/column/2015/02/7429/

そもそもこのアルバムはソロとしては21年ぶり(!!!)で、作ろうと思って始めたわけではなく、ライブで演奏することすら全く想定していなく、リハも2回しかやっていないそう。
強い個と高い技を持つこのメンバーでもっと回を重ねれば、もっともっと違う抽斗が開くのかもと思えるライブだった。特にドラムに関しては、本庄さんは長年の付き合いならではの隙間を提供していたと思うけれど、山本さんのドラムはいい意味でけしかけているというか、コミュニケーションを要求しているというか、ギターにもっと違う強さと鳴りと駆け引きをする幅を提供しているように思えた。「after the gold rush」に感傷を与えないところは興味深かった。
そういえば何の曲だったか、ヤマジさんが演奏を任せているようなところがあって、その引いたところが印象的だったし、「hypnopedia」のような曲もまだまだ実験段階というか、これから更に凄みを増していくのだろうなあ。
今回のヤマソロには新しい誰かを受け入れ、反応と変化を楽しみながら、自分の音を突き詰めていくことの歓びがあった。
そして勿論、本庄さんのドラムでのヤマソロも楽しみに待ち望むし、そのときどきで様々なミュージシャンと「ヤマソロ」をどんどん壊して創りあげて欲しいです。最後に。ヤマジさんの唄声もギターの音色も唯一無二で好きだなあと改めて痛感したけれど、ギターは立って弾く姿がやっぱり一番様になるなーと、amphicarで思わず立ち上がってギターソロが炸裂したときに思ったのでした。

セットリストメモ:宙を撃て・からみあうワイヤー・know you want・遅い痛み・屋根裏の地下室・some velvet morning (石橋英子 vo.)・nights rider (ヤマジ&須藤)・hypnopedia (ヤマジ + 須藤・石橋・山本達久)・small stone・intro ・amphicar・over sleeper ーーーアンコール ハルシオン・after the gold rush ーーーアンコール2 blue bus・pray for the sun