秋田市街地歩き


秋田駅ビル。木村伊兵衛による有名なあの写真を使用し「秋田美人」推しがされている観光情報。
駅から街を歩きはじめて、なんかこう静かだなあと思いました。個人店舗よりも西武などの商業施設が目につき、それなりに人の動きはあるけれど、これまで訪れた他の県庁所在地とはちょっと違う……。歩きながら、いわゆる「商店街らしい商店街」が無いことに気が付きました。アーケードがあったり、GWだと鯉のぼりを掲げて「こどもの日イベント」をしている商店街をこれまで見てきたよなと思うと、ちと考えてしまう秋田市の街並み。

駅近くにこんな広場もあるけれど、、、。どうやら戦後間もなく形成された商店街の一角が、80年代初頭に商業施設に変わったもの……という状況。建物のデザインなど「セゾン文化」の匂いが濃厚に漂っていて、あのころにガツーンといろいろやってしまったのではないか、と推測。



市民市場がありました。

初めて目にする山菜がたくさん。地元の方同士で話をしている姿を見かけます。



ミルク焼? 小さな店内では、たい焼きのように次々と焼きたてを販売していました。

白くてビックリ。たっぷり詰まった餡子が美味しい!生地は薄いのにモッチリしててそれだけで美味しくて、隠し味にミルクが入っている=「ミルク焼き」なのかなあと思ったけど、実際には入ってないそうです。単純に見た目が白いからだそう。。。



いい佇まいの一角。このあたりまで歩くと、雰囲気良い店舗が点在している印象を受けます。

「川反中央ビル」2005年に元印刷工場を改装し、ギャラリーやカフェ、雑貨店が入居しています。声高ではなく、店主が好きなことをやり続ける意志が感じられる雰囲気でした。

「亀の町ストア」こちらは2015年に元酒類卸売会社をカフェとオフィスが入る複合ビルに改装。なんかこう、ギラギラ感あり。
どちらも繁華街から少し外れた場所で、「いろんな人が集まりつながる場所をつくりたい」という気持ちから始まっていますが、前者は手のひらサイズ、後者はもっと手広さがあって、そこに10年という「時代の差」を感じたのですが、背景を知るとナルホド……。
「川反中央ビル 自分が生まれた土地で、文化を発信/享受したい。」http://colocal.jp/topics/think-japan/local-action/20130304_16025.html
「亀の町ストア 秋田のまちに「自分たちの行きたい店」をつくる」https://re-re-re-renovation.jp/projects/1822
「亀の町ストア 企業ロゴから地域までデザイン」http://www.sankei.com/region/news/151120/rgn1511200019-n1.html



そしてこちらは紅茶専門店。店名でピンと来る人もいると思いますが「プログレ喫茶」(!)で、オジサマが店主かと思いきや、超絶美人の女性で驚愕……。プログレ好きで英国好き、紅茶の資格も取得し、日々この店でプログレおじさんとコアなトークを繰り広げるという……凄。




こちらはそれぞれ住宅街にポツンとある珈琲屋さん。特に後者が持つ空気がとても好きになりました。


こんな塩梅で街の至る所に「誰かの何か」がひっそりとあるのがおもしろい。でも行政はといえば、その時代の流行りに乗ったハコモノを作りたがり、東京の代理店任せの状況が見て取れるので、勿体無いなあと思えるのです、余所者としては。

昨年、市民公園内の元割烹を「文化産業施設」としてリノベ。”スペシャルティコーヒー”と”日本酒”の店がオープン。。。うーん。


カフェで「のんびり」という秋田県を紹介するフリーペーパーを見つけました。クウネル以後流行った「地域の魅力を紹介するほっこり雑誌」なムードでありますが、なかなか読み応えある誌面。語り口はどこかで……と思ったら「Re:S」編集長だった藤本智士さんが携わっていました。 http://non-biri.net/index.html このサイト内「のんびりを読む」で、PDFかflashでバックナンバーを読むことができます。vol.8の秋田内陸縦貫鉄道の特集がオススメ。  

そして「のんびり」が作られた背景を読むと、うーんナルホド。  → https://www.projectdesign.jp/201411/mediaventures/001693.php
現在は発行終了しており、また違う編集のフリーペーパーが発行されていました・・・。



駅舎内は改装したばかりのようで、秋田杉を活用したシンプルなデザインがスッキリとしていて好みでした。



待合室らしくない椅子はロッキングチェアまであって、人々が「待つ」のではなく、のんびりと「過ごす」ためにここにいるような雰囲気で、公園のような空間であることが印象的でした。改札前の通路にも秋田杉で作られたオブジェのようなベンチがいくつもあって、学生たちがお喋りをしていました。数年前に行った土佐くろしお鉄道中村駅を思い出すよな、人々の間をそっと包む感じ。



そして夜。駅前バスロータリーの灯りが優しくて、この光景に胸を掴まれてしまいました。数年前に改装されたそうで、この景色が秋田に住む人たちに刻まれていくって素敵だなあ。真冬とかダイジョブかしらという気持ちもありつつ。
ややもすると「ある具体的な行動をしてもらうがためのハコ」を作ることにお金を使いがちだけど、この街で暮らす人々の生活サイクルに必ず存在する「時間」を如何に過ごしてもらうか、という気持ちから導かれていく場が増えていくと良いなあと思うのです。