柳ヶ瀬〜再生する繁華街

東京から新幹線で名古屋へ向かい、そこから普通列車に乗って20分足らずで岐阜駅へ到着。ここからこの旅がはじまります。何故岐阜にしたかというと、東京からほど近く、また地元が長野の私にとっては隣の県であったのにもかかわらず、観光として訪れたことがなかったからです。そして「城下町へ行こう」で紹介された”郡上八幡”と”愛知県犬山市”が、私が惹かれる「城と川のある街」であることを知ったからでもある…。
この2つの街をメインに、宿泊地を岐阜市とし、最後にちょっと名古屋に寄ろう〜などとぼんやりと考えていたのですが、岐阜市がとても良くって結局ここがメインとなりました。
いつも旅に行くときはそんなに事前情報を入れすぎないようにしていますが、今回は特にそんな状況だったことが功を奏しました。岐阜市は古い町名が残っていますが、駅から歩きながら町の名前と通りごとの雰囲気、目に付く商店や住宅の佇まいや道路の区画などから成り立ちを想像したのちに、町のかたから直接お話を伺ったり、地元発行の小冊子などを読んだり、ネットで調べることによって、足で得たものが実際の歴史に繋がったことがとても興味深く、楽しかったです。
鵜飼いが行われることで知られる長良川が流れ、戦国時代には城下町として栄えた街。

・柳ヶ瀬〜再生する繁華街
美殿町〜静かに迎える商店街
・伊奈波〜歴史と文化のある住宅街
・川原町〜伝統を今に息づかせる街
・加納町〜中山道の宿場町
大まかに分けるとこんな感じでしょうか。



駅前は広いロータリーでペデストリアンデッキで渡ります。辺りはスコーっと開かれていてぽつんと高層マンションがあるくらい、いかにも最近の再開発で一掃された雰囲気があります。
 この金ピカの銅像織田信長…。

デッキとなる歩道をそのまま進めば名鉄岐阜駅になり、ロフトがあったり栄えているのが見えますが、途中で歩道を下りて古い建物が密集している路面を歩くことにしました。

辺りの建物は閉ざされていて、頭上の看板を見るにかつては繊維問屋街であったみたい。そのあいまに古い喫茶店などの看板も見えるけれど、駅前ということもあり居酒屋が多く並んでいる。車が入ってこない通りなので歩道に椅子を出したりして、昼間から焼き鳥の煙がたなびく感じ。

中心繁華街の柳ヶ瀬へ

東側の大通りへ曲がるとアーケードが続き、バスが走り、よくある地方都市の駅前通りになっている。商店は飲食店を中心にチェーン店もあるけれど古い店も多い。銀行がいくつか、どれも立派な造り。交差点の目立つところにドンキホーテがあってビックリした。ドンキホーテの向こうを曲がった一角もアーケードだけど、やっぱり、、なシャッターの閉まりっぷり。。。

かつてはテナントビルだった?な大きな建物の、ホコリがかったショーウインドーに貼ってある色あせたポスターの「ザ・80年代」なテイストが寂しい。


角を曲がるたびにアーケードが続き、さほど広くはない区画に小さな店がギッシリ詰まっている。中ほどに高島屋があり、その周辺はなかなかの人出。と、こんな看板が。

この界隈は映画館がいくつもあったようで、「映画館に来て商店で買い物や飲食をして過ごす」繁華街であったことがわかります。いまではシネコンのあるSCが一手に引き受けているんだもんねえ。。。今は新作上映が中心のと、雑居ビルのなかにもうひとつ、なんと旧作中心。「昭和名作」と題して週代わりで特集が組まれ、しかも500円!スゴい!

そういえばこんな唄が・・・

とはいえ、開けてはいても商売を感じさせない店も多々あり、このまま衰退していくのかなと思わずにはいられない…と思ったところへ
「やながせ倉庫」
旅行直前に、岐阜市内には「古い雑居ビルを再利用して若い世代が開いた店が集まっている場所」があると知ったのですが、ここのようです。

中に入るとポップな60年代の古着屋さんやカフェに古本屋に雑貨など、下北沢を思い起こす雰囲気。驚いたのは建物の構造…!

両開きのガラス扉を開くと中庭になっていて、思ってもみなかった空間になっていたのです。

トタンをつぎはぎされた壁面の上からやわらかい光がさしています。仰ぎ見るむき出しの階段、周囲には配線がぐるぐると”自由な”線を描き、どう見ても普通の状態じゃないわけですが!!!、面白いなあ。

2階部分の看板に「軍国酒場」「民謡酒場」とある・・・

もともとは昭和30年代に建てられた雑居ビル。入居していたスナックなどが寂びれる状態で受け継いだオーナーがこれを活用したいと、2004年に蘇らせたことによります。増築を繰り返して迷路のように複雑な造りを活かしつつ、改装・改修は入居者とオーナーが共同で行い、テナント料を格安に設定したことで若い人が開業しやすくなったのです。

こんな小冊子が発行されていました。この街のタウンガイドでかわいいつくりだけど、内容がとっても濃い!編集が良い!単なる”ほっこり”で”くうねる”ではなく、どんな店でどんな人が営んでいるのかをこの街の視点で捉えてあり、構成もよくて、読み物としてとっても面白いのです。
やながせ倉庫を中心に、徐々に若い人たちによるお店が商店街のなかに生まれていました。
和菓子屋さん。イマドキな佇まいながら質が高く美味しかった。

当初寂びれた街に思えましたが、タテヨコに入り組んだ路地を入るたびに新たな息吹を感じさせる店を見つけることが出来ました。飲食店に雑貨に文房具、古本屋など既に街の人々に愛されていることが伺えました。どの店も「岐阜のこの街が好きで、幼い頃から当たり前にあったものを活かして暮らしている」感じが伝わってくるのです。そういうのが今っぽくもある。ハレの日ではなく、あくまでもちょっと寄りたい店*1なところが良いな。
先ほどの小冊子は先月出来たばかりみたい。やながせ倉庫が出来たのが2004年、やっぱり少なくとも10年続けるということなのかなと思うのです。

ここから市内をぐるりと歩き巡り、柳ヶ瀬に戻ってくると岐阜市の成り立ちがいろいろ見えてきたのです。
(岐阜旅日記、毎日はさすがに綴れないと思いますが、時折目についたら読んでやってくださいませ)

*1:なんだけど、開店が遅く閉店が早い店がチラホラ。。。GWなだけに掴めないけど、地元のひとは土日の昼すぎに行くのかなあ