PERFECT DAYS［試写会日記］／eHills Club
柳井康治（企画・プロデュース）「TTTの真の価値は、建築的価値のみでなく、日々汚れていくトイレを毎日毎日清掃し続ける清掃員の奮闘にこそあり、アートの力を通じて清掃員の皆さんへの感謝や敬意を表したい」
田中泯｢映画､ドラマ作る側が国民ばかにしている｣ カンヌ映画祭で男優賞を受賞した役所広司と会見 | 日刊スポーツ | 東洋経済オンライン
田中泯（出演）「僕は全然、この映画をアートだとは思わない。アートって言った時、特に日本って、反応してしまう物質がまん延している。僕は、この映画こそ普通の映画と人々に受け止めてもらいたい」
話題性によりヴェンダース作品なのにシネコン・・・嫌だなあと思いながらつらくなさそうな上映館で鑑賞。製作経緯が念頭にある中で、「朝のルーティーンで買う自販機の缶コーヒーの銘柄はきっと・・・」「仕事で使う車の保険はきっと・・・」などと出演CMがよぎりながら、彼を取り巻く人々の「テンプレートっぷり」溢れる序盤の描き方にモヤモヤしてたけど（某レコ屋でのシーンには怒）、木漏れ日のざわめきが心に響き、私の心象風景に重なり、ルー・リード流れるシーンの美しさに泣いた。それだけでもう満足。
川沿いを自転車で走るシーンなどその後も心をひどく動かされ、ラストはクドイが圧巻の演出＆演技であった。ありがとうヴェンダースという気持ちでいっぱい。。。。平山の目に映る神社の高い樹々の葉や白い壁に映る影、それらを写真に納めたり、好きな音楽を聴きたり本を読んだり、馴染みの店に行く日常が私と同じすぎて、肯定感しかない。
選曲はああヴェンダースが日々聴いているんだろうなってセレクトで、さながら観客へ向けたミックステープのよう。
映画『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース監督インタビュー──「孤独」の強さと美しさを描く | GQ JAPAN
「誰かに音楽をプレゼントしようと、カセットでミックステープをつくることにはストーリーがある。でもデジタルでプレイリストをつくるのはもっと匿名的な行為で、私はそこにストーリーを感じることができないのです。人間と人間の関係性は、カセットテープだからこそ紡いでいくことができるように思います。」
ホクホクしつつも脳内に浮かんでいたのはuminecosounds「味噌」で、平山の求道的な部分と古里さんが重なるのだ。ヴェンダースもきっと、好きじゃないかなあ。
VIDEO - uminecosounds
ヴェンダースはいつ東京をロケハンしてたのか。ヴェンダースに提示するために事前にロケハンしたスタッフの「視点／編集」も当然あり、共同脚本の元電通社員による「今の日本とは」なテンプレートな目線は否めない。しかしそれを凌駕するヴェンダースの演出と役所広司の演技が素晴らしかった。
代理店的な肩書きだと「なんでもない毎日こそが愛おしい」「日々のなかに潜む美しさに気づき丁寧に生きよう」なんてところでしょうし、ソレにうなづく「＆premium」な澄んだ層とともに、ソレを「上から目線で語るな」層に分かれて過剰反応されているようだけど、ヴェンダースはそんな上っ面を気にすることなく、自分が美しいと感じる景色を映画に残した点でさすがである。彼自身日本からの今回のお声がけはありがたかったであろう。そして田中泯さん、カンヌのインタビューの席で冒頭のあの発言もさすが。
件のトイレ、今年度から維持管理は渋谷区が引き継ぐ予定だそうで、最低でも20年は予算きちんと付けて、業務にあたる人たちに適切な賃金をお渡しし、長期スパンで維持してくださいね。そして潤沢な資金を持つ人はノブレスオブリージュの精神であるべきだし、文化に使う場合は自分の名を売るのでも既に名のある人に対して使うのではなく、若い人たちへ使ってほしいものです。
後日、ヴェンダースの妻である写真家ドナータ・ヴェンダース 「KOMOREBI DREAMS: supported by THE TOKYO TOILET Art Project / MASTER MIND」を見に行った。パーフェクトデイズで使われた木漏れ日に包まれたのです。
PERFECT DAYSの撮影に入る前にKomorebi と言う言葉をはじめて聞き、その意味を知ったとき、なぜか自分自身の内側の深いところが動くような気がしました。(中略）それに気づくか否かは、私たちに委ねられています。ほんの少しの瞬間、自分だけのためにあるもののように感じるかもしれない。かすかに見える、遠い場所からの短い挨拶のように。Komorebi は私に深い心地よさと希望を与えてくれます。そして私を人生への喜びと愛で満たしてくれるのです。-ドナータ・ヴェンダース
https://104galerie.com/exhibitions/komorebi-dreams/
