パン屋で見る「モンソーのパン屋の女の子」


小雨混じりの朝。徐々に秋の割合が増してきた。

会社帰り自由が丘へ向かう。この街は頻繁に行かないとはいえ未だに位置関係が掴めない。どこにいるんだかよくわからない街。ごちゃごちゃしてて下北のようで下北とは違う匂い。
ケーキ屋や雑貨屋や洋服屋が集まって「女の子の街」の印象があるけど、駅前は古い飲み屋やラーメン屋が多くて雑然としてて「男の街」の印象が濃厚。それを払拭するために街ぐるみでなんやかんややっているかもしれないけど。「マリ・クレール通り」なんてすんごいネーミング。そんなトコがこの街自体に外様感というか、ひとびとのこの街に対する愛情を逆に感じさせないように思う。一時期の感覚で町全体が止まっている印象がある。

さて「パリ・セヴェイユ」でケーキ。ドーム型の真っ赤なムースを頼んだ。鮮烈な赤はフランボワーズのジュレで、中にはライチのムースとショコラムース。フランボワーズのキッとした酸味がきて、ふっとライチの独特の芳香の甘さ、この2つがあることでチョコレートの風味が最後にすっと残るのだなあ。

歩いて10分程度、奥沢に着く。今日はkinoigluさんの上映会で来たのです。
http://kinoiglu.at.infoseek.co.jp/
フランスのヌーヴェルヴァーグ映画を中心にカフェなどで上映会を行うコチラは過去にも参加したことがあるのだけど予約しなくちゃいけないし、正直私にはこの「いかにもー」な「雑貨り」な感じがどうにもねえ・・・あとごにょごにょ。。な渦を巻いた黒いココロモチがある。しかし今回は「ロメールの短編『モンソーのパン屋の女の子』を『CUPID』で上映する」というのでつい、、ねえ。。。

「CUPID」は最近出来た東京のパン屋の中でも「ねちっとしたハード系のパン」がなかなかにヨイ、パン屋さん*1。ああパン屋で映画を見るなんて!閉店後小さなイートインスペースを使って上映会。ラタトゥイユを載せたバゲッドと白ワインが配られ*2まずは5分ほどの短編が3本。

1本目。監督名忘れた。。(スミマセン・・)10代の男の子3人が両親のいないあいだにガールハント(死語)し家に連れ込む、まあよくあるタイプの、といえる。
2本目。ジャン=ピエール・ジュネの「僕の好きなこと嫌いなこと」。「好きなことと嫌いなこと」をナレーションで連ねてて「あー「アメリ」のあれ」なわけだけどなにしろ登場するのはおなじみのおっさんドミニク・ピノンだし、可愛くない。が「あーこれぞジャン=ピエール・ジュネだったのヨー」と思う。

3本目。アニエス・ヴァルダの「5時から7時のクレオ」の中ででてくるクレオが見る「映画」、ゴダールやアンナ・カリーナ、ブリアリが出演したあのワンシーンのためだけに作られた「映画」、こういうこと出来ちゃう軽やかさがいいなああの時代!キラキラしてる。DVDの映像特典とのこと、ちゃんと「完全版」として残ってるなんてしらなかった!
5時から7時までのクレオ ~Collector’s Edition~ [DVD]

5時から7時までのクレオ ~Collector’s Edition~ [DVD]

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で、本題「モンソーのパン屋の女の子」。
男のどーしよーもない行動、その目的の場繫ぎに過ぎない偶然そこにあった「パン屋」、それがうまいこと男のどーしよーもなさに繋がってて面白かった。店で物を買うってこうゆうことだよなあ。生活の何気ない部分がそのままその人そのものになるのだなあ。大げさにいうと人生のある一時期、ほんのひとときを「ザクッ」とスコップですくい上げたよな。:::
ロメールが好き」だから見に来たわけではなく「営業後のパン屋でちっこく上映する」(←カフェではなく「パン屋で」がポイント)から見に来たのだけど、こういうのもたまにいいなあ。90年代前半に養われた感覚が今、という感じ?「ケッ」と言ってしまいガチではあるけども(ああひねくれもの)。「音甘映画館」を地で行ってて妄想が加速してしまう。
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ところで見に来たひとのなかに「パリ・セヴェイユ」の金子シェフがいらっしゃっててびっくり。さっき食べたばっかりだし・・・!いつかこちらのお店でも上映会したりして。
帰りにバゲッド1本いただく。あとタルトも買った。映画に出てきたアプリコットのタルト、は時期的に難しいのでプラムのタルトを。これがおいしかった!プラムの酸味、その下のダマンド生地にはアールグレイの葉が混ぜてあってその香りが良く合うのです。アーモンドプードルとバターたっぷりのダマンド生地は重く感じられるものだけど、これは優雅でさわやかとさえ思う。土台はがっしりとしたタルト生地ではなくパイ生地のような薄い層が重なったもの。パイのようにしょりしょりしてなくてしっかりしているんだけど軽いのでこのダマンド生地と良く合うのです。
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ちょっと時間が止まったような雰囲気の商店街を通って奥沢駅についた。明日はバゲッド持って会社行こうっと。(休憩室にトースターがあるので大助かり!)

*1:90年代前半に流行った「ニッポン人の想像する」パリの雰囲気がむんむんと。

*2:スタルクのパーティプレートにっ、お皿にグラスが刺せるやつ。がアルコールがダメな私ゆえ飲めず・・無念