ホワイト・プラネット・スカイ

兼六園の向こうに金沢21世紀美術館、楽しみにしていたところだ。
まだ9時を回ったところ。開館は10時だけどフリーエリアはもう見ることが出来る。円形の真っ白な館にどきどきしながら入る。まっさきに目当ての「部屋」へ、ところが専門学生くらいの男の子3人組が大きな声を上げて走り回り出鼻をくじかれ一気にどよーん。そりゃここはフリーエリア、でもでも・・・注意する気にもなれず早く立ち去ってくれと苛々と願うのみ、暫くして誰もいなくなり静寂が戻った。深呼吸して入るのは「タレルの部屋」。
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自動ドアを開けるとびゅうっと金沢の冷気が体を包む、そのひゃっこりさに釣り合うように目の前は白かった。





白。





白い壁に高く囲まれた空間、見上げた天井はぽっかりと正方形に切り取られ、雲に覆われた真っ白な空がそのままでそこにあった。
ぽかん。
色も音もなかった。


白い空間の中で立ち尽くしてずっと四角い白い空を見上げていた、じじじと体が震えた、涙が滲んできた、その感覚は私の皮膚の下に刻まれたことだろう、さっきのようなことで苛々としてしまう自分のちっちゃな部分がざざざと流され、ああ私はなんにもないんだなあって思った、見上げながら四角の線を辿りカクカクと歩き周りの壁を囲う石のベンチに座り壁に頭をつけるとひんやりとしてじりじりと頭の中にサイン波が送られたようになって、白い空間に溶けていくみたいだった。上空は相変わらず白いまんまだけどわずかながら色味は変化していく、鳥や飛行機が通り抜ける、なんにもないけどあまりにも大きなものがここにあった。
ジェームズ・タレル作「ブルー・プラネット・スカイ」。
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開館時刻のアナウンスが聞こえてエントランスに移動すると学校の課外授業のようで、沢山の生徒でごった返していた。このなかでは落ち着いて見ることは不可能だと午後また来ることにして、外へ出た。