kahimi-karie/鎌倉妙本寺


カヒミ・カリィが寺院でライブを行ったことは初めてではないけれど、なかなかない機会であるしどんなふうに響くのかしらと楽しみにしていました。
ところがこの妙本寺という場所はカヒミにとって非常に大きな驚くべき意味を持つところだったのです。
寺のあるこの地は「比企谷」といい鎌倉時代に源家、北条家に継ぐ豪族の比企家が収めていたのですが、北条家により滅ぼされてしまう。なんとか生き残った者が後に一族の霊を弔う為に建立したのが、妙本寺であり比企家の末裔がカヒミであるというのです。比企とはカヒミの本名であるのは言わずとしれた話ですが、まさかこんな壮大な話があったとは。。。


通常の演奏前後に僧侶7名による儀式が執り行われ、これがさすがに圧巻。最初外から聞こえてきた読経はそのままお堂のなかへ入ります。目をつぶって聴いていたので遠くから近くへと回ってきた声にぞくぞくしました。
15分ほど繰り広げられた読経は7人の微妙に音域が異なる声の重なりあいで繰り返され、凄まじい倍音で響いてきて、ああ音楽の根源を聴いた思い。からだの動きには無駄がなくとても美しかった。


さて肝心のカヒミさんのライブ演奏ですが、大友さんのギターに笙、パーカッションなど意外にもメンバーを揃えていました。ラストの"you are here for a light"のギターワークには痺れましたが、全体を通してこのお堂では楽器類が立ちすぎてしまい、期待していた静謐な空間にはならなかったかなという印象が残りました。個人的には最小限に笙だけとかシンプルに聴きたかったです。
演奏そして儀式を終え静まり返った最後に僧侶の話がありました。音楽とはもともと供養の方法のひとつであり、だから"
(苦しみを)音で楽にする"と書くのだなどさすがに含蓄深いお言葉ばかり。

今回はライブというよりも「比企一族悲願の一大供養」という趣が強い特別な会であり、このようなライブは前代未聞でしょう。「あの」カヒミが自らのルーツを紐解きそれを明かし、今回の催しを開いたことがとても感慨深いです。
彼女といえば「フランス」といえるだろうけど、私としては「彼女のすきなフランス」とは「彼女のアイテム」にすぎないようにやっかみ半分ながら感じていました。(これはメディアに出ている知る限りの部分においてでありますが)
けれど今、真に自分と向き合い自分のルーツを認めた真摯な姿を感じました。彼女が新たに大友さんと組んで新しい仲間たちと音をつくりライブで世界を回ることは「私のアイデンティティとはなんだろうか」と彼女のこれまでの心を打ち砕く出来事だったではと大きなお世話ながら推測してしまう。
今の彼女の音楽には強い芯がありながら穏やかでここちよい。
私が10代のころオンタイムで聴き好きになったひとの変化をオンタイムで感じることは私にことのほか強く揺さぶるものがある。音楽を聴き続けてこんな心境になるなんて!(変わらないように見えるKaジくんもその強度を増しててスゴいけど)(オzawaくんは永遠にコダワリの森を彷徨いつづけているようにみえますけど)


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