ジム・ランビー:アンノウン プレジャーズ

土曜日。品川駅を出ると目の前にひっそりと小さなホテルがあるのを眺める。高層ビルに囲まれて時間が止まったままの静かなこの一角が次の日のニュースを騒がせることになるとは。
そこを左に折れてゆるやかな上り坂を進む。日陰で寒さに震えながら行くと広がる景色!
JRと京急の線路に掛かる橋の上が大好きだ。山手線に東海道線横須賀線の黄緑やオレンジや紺のラインがぴゅんと走るとその奥に白と青のラインがびゅーんと走り去るのは新幹線、そして一番ぐっとくるのは赤い車両の京急がぐいいいんと弧を描いて抜けていくとこ、その向こうには古めで高層の都営アパートが頼り無さげに建っている。壁面のアパート名のロゴがなんともかわいい。
ここからの眺めはいつ見ても飽きない。寒くても暑くてもしばらくこの場でぼんやりする。車体の色の線の流れと車両が走る音の流れを楽しんでいる。


坂を上りきり右へ折れ住宅街に入り、原美術館に着いた。

「ジム・ランビー:アンノウン プレジャーズ」展。彼の作品は以前オペラシティで見た際に*1、部屋の床一面に張り巡らせたストライプが印象的だった。今回は個展ということで原美術館全体が作品として染め変わっていた。昭和モダンでクラシカルな建物がUKモダーンなテイストに。
タイトルの「アンノウン プレジャーズ」と云えば思い出すのは当然、これで。

Unknown Pleasures (Bonus CD) (Reis)

Unknown Pleasures (Bonus CD) (Reis)

そう、ジム・ランビーのテイストってピーター・サヴィルに繋がるのだなあ。
2階の部屋でじっっと黒と白の行方を辿っていた、直線ではなく曲線の、一定の速度で次々と波紋を広げてゆくそれはレコードがプレーヤの上で回るみたいで次第に立ち上がるリズムの軌跡となり音楽が始まる!と思いきやしゅんと私は静けさの中に落ちた、何故か不思議と重森三玲による枯山水の庭園と繋がったのだった。