お菓子も電車も

只今ギャラリー関連を書くの忘れないようにしようと心がけている故、こういう話続いております、無駄に長々すみません。

「子どもとお菓子」展

赤坂見附から7分ほど、ビジネス街を歩いていくとひっそりとでも重々しく佇む虎屋本店にて。恒例の虎屋文庫資料展、今回はこんな内容。

今も昔も子どもたちはお菓子が大好き。今回は、江戸〜大正時代を中心に、駄菓子屋や縁日のお菓子ほか、子どもの健やかな成長を願って用意された一升餅や、端午の粽・柏餅などをご紹介します。

高級品であった甘味が庶民にも広まったのは江戸時代のこと。当時の絵画にその様子が記録されていて、とても愛らしい。気が抜けてるトコがたまらないのっ。特に「ほうずきあそび」という絵にホレた。"「こども」が飴買ってたり赤ちゃんあやしてたり…な様子を描いている"んだけど、その「こども」、「ほうずき」なの!ほうずきの「実の部分を頭にガクを体に」してるの、てるてるぼうずみたいに。ほうずきを擬人化て!この発想ったら!かわいいいい。
実際のお菓子ならば「文字焼」が楽しそう。江戸時代の駄菓子屋で見られたもので、鉄板の上に砂糖入りの小麦粉生地で文字などをつくって焼いたお菓子。お菓子というよりは「遊び道具」で今で云う「ねるねるねるね」的なもの?(遊んだコトないけど)みんなでワイワイやってる姿が目に浮かぶなあ。

先に記した「虎屋文庫」とは「和菓子文化の伝承と創造の一翼を担うことを目的として創設されたもの」で、「虎屋に残る菓子の絵図帳や古文書や古器物などを保存し、年1回〜2回テーマを立てて展示を開催」しています。狭いギャラリーではあるけれど毎回充実した内容で、立派な小冊子もいただけるし、いやはやさすが虎屋はスゴいなーと唸ります。この後の予定があるので地下の茶寮は立ち寄らず。
http://www.toraya-group.co.jp/gallery/dat_index.html

出雲の古い観光写真に出会う

ここから青山一丁目方面へ歩く、途中で旅本屋へ寄ると昔の観光写真葉書を見つける。行ったばかりの出雲大社のがあったので即購入。きゃー、なんたる偶然、嬉しいな。

表の袋もステキ。「幽邃絶塵平和の神威」てスゴいな…。(辞書引いたよ…)こういうのが流行った昭和初期のものでしょうか、袋から写真を取り出すと、

「浦島太郎の玉手箱」気分!止まった時がふああっと蘇ってくるような静謐な空気が白黒に漂っている。でもこの間見たばかりの景色とあまり変わっていないようでもあるのだなあ、不思議…。

(↑先日旅行したばかりの出雲大社の写真。海の岩の「同じ様」にちょっと感動したよ…)


次いで六本木へ移動、ミッドタウンへ。

「日本の染め色」展

こちらでもまたまた虎屋、併設ギャラリーにて開催中の「日本の染め色展」を見る。
染司の吉岡幸雄氏の手により植物から抽出された色彩の美しさ。縹色、胡桃色、紅葉色、杜若色…。うっとり。カラカラの色の無い樹皮や実から「まさにそのもの」な色が出て来るなんて。更に今回、虎屋でということで「小豆色」があった。その繊細で曖昧な色、やわらかだけどキリリとしている。

写真撮影可とのことだったので1枚撮らせていただく。

それにしても最近の虎屋の姿勢には驚かされる。室町時代末期(!)から続く歴史を持ちながらそこにおごることなく「伝統とは革新の連続である」という信念を掲げて事業展開されている、そういうところってそうそうないんじゃないかしら。
「トラヤカフェ」が出来たときに長尾智子*1がブレーンであることに驚いたけれど、同時期より葛西薫*2がクリエイティブ・ディレクターとなってパッケージから店舗に至るまで再考し、「変わらないように変えた」ことで、重厚さを保ちつつ洗練された印象となった。ミッドタウンの店舗の「ガラスブロックならぬ陶器ブロック」使いが素敵。
こんな「伝統維持と変革」のバランスに、なんとなくエルメス*3を思い起こしたりもする。


こんなトコにスバラシイギャラリーが

茶寮でひとやすみして館内を見る。"縁遠過ぎる"上の階を見るの初めて。確かに買わないわな…な店ばかりだけど「和」のテイストが多いのは流行りだから?
そんな中にギャラリーがあった。「Fuji Xerox Art Space」、富士ゼロックスの版画コレクションを展示しているとのこと。

コレクションには、ピカソマチスポロックアンディ・ウォーホルといった著名な作家の作品から、シュルレアリスムやダダ、ロシア構成主義バウハウスの作品など、20世紀の美術を概観できるよう体系的に集められており、展覧会テーマに合わせ、常時約20から40作品展示いたします。

恥ずかしながら、こんなトコあるの知らなかった!(今更すみません)
現在の展示は「版画美術にみる戦後ドイツの美術」で2月から始まってて今はなんとIV期目!
これまでにヨーゼフ・ボイスとかリヒターの作品を展示済み(見たかった!)で、今回は「アブラハムダヴィッド・クリスチャン、ブリンキー・パレルモ、ハンネ・ダルボーフェン」とぜんっぜん知らない作家。バウハウスの影響が強いミニマルな作風で、ぎゃーコレは好みだわあ。思いがけずいい作品を見た。
所蔵作品一覧を見ると好きな作家がズラリ。過去にもいい展覧会やってたんだなあ…。今後、定期的に通いたい。

富士ゼロックスの事業の中心である「複写・ドキュメント」と深い関係を持つプリントアートである版画作品の収集および展示活動を行なっています。

というようないわゆる「メセナ活動」は昨今ますます切り詰められるだろうけど、是非とも続けていただきたい!
http://www.fujixerox.co.jp/event/hanga/index.html

みんなの鉄道」写真展

同じくミッドタウンの別のビルにあるフジフイルム スクエアにて。

本写真展では、懐かしいSLや、昨年惜しまれながらも引退した0系新幹線、また、ブルートレインや、人々の生活に息づく癒し溢れる電車風景などの鉄道写真はもちろん、その他にも、人気のワンニャン駅長や、驚くべき場所にある「秘境駅」の写真など、感性豊かな写真家独自の視点から撮影した、鉄道に関するバラエティーに富んだ作品を展示いたします。

とあっては見ずにいられないのだ!
「鉄道写真の第一人者」である故・真島満秀さんの写真は奥行きや深みがあって、ほんとうに素晴らしかった。ぐっとくる。電車愛はもちろんのこと、その電車が走る土地や暮らす人々まで全てを見つめる眼差しがあった。
中井精也さんの写真も電車愛と共にクリエイティブ魂が感じられて「見て楽しい」。
0系新幹線の写真特集、もはやノスタルジー。今の子供は"新幹線"といってこの形を描かないのかなあ?
それとそれと、「ブルートレインヘッドマーク展示」にはきゅるんきゅるんした。車両の頭に付いてるアレ。ロゴが素敵!かわいい!私は単純に「電車が走る風景」を見るのが好きなのだけど、この種のコレクターのひとの気持ちがちょっとわかるような…。だって欲しくなったんだもん。。。
http://fujifilmsquare.jp/detail/09042901.html


今日見た展示、「お菓子」に「電車」に!と好きなモノ拾って振り返れば、企業が本来の事業に関連して行なっている展示ばかりだった。全て無料で鑑賞出来るのデス。
企業は文化活動にお金使うどころじゃないだろうけど、美術鑑賞が「アート」なんて横文字でビジネスのニオイぷんぷんなひとつのイベントになっている今日この頃、なあんかモヤモヤする。むー。

*1:

 新刊でましたね。このひとは料理を「デザイン」する印象。

*2:

葛西薫の仕事と周辺 (Director and Designer SCAN)

葛西薫の仕事と周辺 (Director and Designer SCAN)

 芯の通った「品」があるのが好き。

*3:そういえば銀座のエルメスはガラスブロック仕立てのビルだ