「ZINE'S MATE: TOKYO ART BOOK FAIR 2009」が本日10日から12日まで開催されています。自費出版によるブックフェアです。最近「zin(ジン)」と呼ばれることが多いなか「ZINE'S MATE(ジンズメイト→ジーンズメイト)」とはナイスネーミング*1。
「ミニコミ」とか「ファンジン」という言い方が個人的には馴染み深いんだけど、ちょっと前から「リトルプレス」といわれるものを目にするようになり、立派なつくりの誌面のものが多くて驚かされます。
で今回はUtrechtとPAPERBACKが主催で「アーティストブックのフェア」という名目、場所は表参道のgyreとVACANTなんて!あーなんかこう、「キラッキラ」してるのでビクつきながら行ってきました。
まずはメイン会場のgyre
シャネルとブルガリの間を突っ切って、マルジェラを指をくわえながら横目で眺めつつ、3階のギャラリーだったとこ*2へ。こちらは有名ギャラリーとか出版社中心のまさに「アーティストブック」な世界。一般にも流通しているようなものも見られ「ジン」とはいえないような雰囲気でありました。欲しいのあったけど高過ぎて手がでませんよ〜。
お次は歩道橋渡って昔ビクターだったビルの脇を入り、裏原宿なエリアのVACANTへ。この道久しぶりに通った。店増えたなーでも減ったなーという不思議な感じ。なんかがらーんとしてるんだよねえ。後で気づいたけどVACANTって昔DEPTあったとこか!
第二会場VACANTへ
あまり広くない空間にびっしりブースがあり、結構人で賑わってました。作り手のかたとゆっくり会話しながら見るべきモノ*3だと思うけど、ブース間の通路がかなり狭いのでかなりツライ。これ以上人来たらアウトかも。
それと場内暑いです。今日のような真夏日に空調も回りにくいだろうし、人の熱気も加わってムシムシジットリ。出展者の方々もさぞかしタイヘンなことでしょう。
私ってば汗ダクで恥ずかしく、そんでもって若いオシャレさんがいっぱいなもんだから、なななんか私場違いだーよー…とよけいイヤな汗が…。
そんなわけでゆっくり見るのが難しかったので、何度も外に出て休憩してはまた中へとグルグル回ってしまいました。
んでもそう、20代中心だし美大や専門学校のニオイがして、「あーやっぱりまだこういう世界があるんだなあ」と甘酸っぱいキモチになりました。出版不況と云われる昨今だけど「紙でつくられた本」をつくることで自己表現をしようとする人たちが表層化するということはいい機会だなあと彼らを見て改めて思いました。
zin or artbook
にしても今はホントに「書籍」がつくれてしまうんだなあというのがぐるっと回った第一印象。
「コピーしてホチキスで留めて」なんての無いのねー!
装丁もしっかりと「印刷然」としてたし、なによりちょっと価格帯がお高い気が。少部数印刷だとそれくらいしてしまうのはわかるけれど、私としてはもっと「手作り感」あるものを所望してました。「硬い表紙じゃなくてもフルカラーじゃなくてもいいんだよー」って。
プロの編集者でいらっしゃる山村光春さん(bookluck)のように「この素晴らしさを伝えるための最善の方法」として一般の流通では難しい製本にチャレンジされているものもあります。(以前ギャラリーで購入した「LOOPHOLE」は手の込んだ装丁で"紙をめくる楽しさ"があり、愛らしく素敵な冊子で大切にしています。)
しかし各ブースを何度回ってもなんというか「形」がキレイなものが多く、似通ったテイストのものも見られたり。うーん自費出版ならではの「ワタシのコダワリ」が欲しいなあ。「アートブック」というくくりに添っているのだからこれでいいのかしら。でもでもでも。
そんなちょっとモヤモヤする部分を救ってくださったのは、Lilmagの野中モモさんが配っていらっしゃった「ジンについての熱き思い」を綴ったチラシでした。引用させていただくと、
「イタいキモい恥ずかしい、しかしそれ故に正しい人に正しいタイミングで届いたとき最高に心を揺さぶる!というのが、私にとってのジン。」
「世のトレンドとかスポンサー(パトロン)の意向浮き沈みに関わらず何かを発表したら相手してくれる人を獲得しようっていう、個人と個人の繋がりを求める心だと思うのです。」
まさに、まさに!
ジン? リトルプレス?
以前書いたけど
オトメなミニコミ誌も増えた昨今ですがそのこざっぱりな姿はどうも淡白で味気なく、かといってジンもなかなか濃ゆすぎてねえ…
→「TWEE GRRRLS CLUB」と「murren」
というのが私のキモチにあります。
ここ何年か「地方発信」のリトルプレスと呼ばれるものが増えていますが*4「制作者は20代後半から30代の女性」で「ネタは地元の古くからの手工業」だとかが多い気がするんだけど、気のせいでしょうか。ある意味「地域情報誌」「旅行雑誌」の側面もあり、大手出版社からの本といっても遜色無いようなつくりは「見る人が確実にいる」からできるのかしら。
ジンというものはもっとずっと個人的なもので、ターゲット云々じゃあくて「これが大好きなんだ、これを伝えたいんだ」という思いがぎゅぎゅっと詰まったもの、というのが私のイメージ。
つまり「濃縮されたその人そのもの」だから、「あ、これ好き!」ってピンとくるのものに出会うのは難しい。自分のコアな部分が合う人ってそうそういないでしょう?野中さんがおっしゃる『正しい人に正しいタイミングで届いたとき最高に心を揺さぶる』という言葉に納得します。
ただ、私が思うに「自分を出しつつも」ある程度「客観視」が必要で、自分の気持ちに「編集」作業をし装丁に「センス」(ってひとことこそ難しいけど)が感じられるものでないと、でろりと生々しくて扱いに困ってしまうのです。そこに醍醐味があるという意見もあると思いますが。個人的には「ぎゅっと詰まりつつもヌケた風が通っている」ものにぐっときます。
入り口脇にご注意
さてはて。
会場の入り口横の壁際に「突き刺さった」冊子が並んでました。コレなんだろーとパラパラ見たなかで気になるのがあって、中で販売してるもののサンプルなのかなーでもどこのブースだろーと思ってたのに、熱気でうっかり忘れてたのだけどあれ委託販売枠だったのね!(MIXED BOOTH)ええーわかんないよ!誰もいないし!
もっとちゃんと見ればよかった!あの「展示方法」は外国ではよくあるものなのでしょうか(なんとなくどこぞから影響された雰囲気が)。オシャレぽいかもしれないけどあの置き方だと閲覧しにくし、委託したひとがかわいそうだ。しかも外だし。
2010~?
このような発表の場がつくられたことはとても意義あることだし、今後も是非続けて欲しい。ただそれが目に見えないものに振り回されたり、「アーティスト」なんて呼ばれるんじゃなくて「一個人としてのもの」に出会う場であることを願います。