珈琲一杯から

さて、レコを購入し、まだ歩いていないエリアである鹿児島中央駅の西側へ行ってみました。そこに、白亜の珈琲屋さんが。自家焙煎されているようで、入ってみました。
ひっそりとした狭い店内には、のんびりとした空気が流れています。珈琲豆の瓶がずらりと並んでいるわけではなく、おうちに招かれているようでもありました。
ひとりでやっていらっしゃり、豆の種類を始め、所蔵の書籍や壁にかかる木版画などを見ると、"珈琲に憑かれてしまった"かたなのだろうなと感じられます。店内には真空管アンプや樽製のスピーカーなんてものがあり、音環境へのコダワリも感じます。
ネルで丁寧に抽れられた珈琲は、苦くて甘くて酸味もある複雑な味わいでとてもおいしかった。

東京から旅行で来たことを話すと、鹿児島の自家焙煎珈琲店事情をいろいろ教えてくださいました。
ご主人は焙煎を「研究」されていて、その長年の経験を元に「珈琲講座」を行なうなどの活動もしていらっしゃるそう。外で珈琲豆の苗を栽培されていたり、珈琲への情熱がひしひしと感じられる語り口は、とても楽しいものでした。

そんななか、ご主人は我らの手元にあるレコ袋を見て「それ、買ったの?かけようか」などとおっしゃいました。
「いえいえいえ、お店の雰囲気にあうようなレコードじゃないので…」(いや、ホントに80年代浮かれサウンドばかり、だったので…)と返し「駅のそばの中古盤屋で買ったんですよ」というと、「あー、ボクもそこで昔からよく買うよ。タンゴが好きなんでね。」とのこと。
先ほどから真空管のアンプや樽製スピーカーが気になっていたことをいうと、「スピーカーは自作で、アンプはつくってもらった」そうで、ここから今度は「オーディオ/音楽」への情熱たっぷりの話が始まりましたが、これもとっても楽しかった。
そのときはCDでクラシックのピアノ曲がかかっていましたが、古いタンゴのレコードをかけてくださると、樽スピーカーは音とともにアルゼンチンの空気をも伝えてくれました。

そして再び話題は珈琲へ。東京の珈琲店の話になり、私が贔屓にしている店のご主人とは昔からの仲だということがわかって、そこでまた話が弾んだり。お話は尽きなくて、珈琲は奥深いですねと言ったら、「深いというよりも面白いんですよ」とおっしゃって、ああ珈琲がほんとうにお好きなんだなあという笑顔が印象的でした。