バウハウスがつくる、森谷延雄がつくる、あたらしいせかい

バウハウス・キッチン展」

バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン 伝説のデザイン学校が考えた、キッチンと暮らしの道具

バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン 伝説のデザイン学校が考えた、キッチンと暮らしの道具

バウハウスの展示といえば94〜5年くらいに、今はなき池袋のセゾン美術館で開催された大規模な展覧会の印象が強く、以降続いた「バウハウス」を冠にした展覧会はどうにも物足りませんでした。しかし今回、パナソニック電工 汐留ミュージアムで開かれているのは

特に1920年代以降、家庭生活の現場での女性の労働を少しでも改善しようとする道具、家具、機器、デザインが次々と開発され、現在にまで繋がる合理的生活スタイルの原型が提案されました。そういった動きの中で、バウハウスも女性を家事労働から解放するための、機能的な空間としての新たなキッチンとその周辺器具も提案していました。
本展は、そのようなバウハウスのキッチン関連の作品をポットからティーストレイナーなど計200点を紹介し、無駄をそぎ落とした新しいデザイン、新しい女性像、新しい生活様式の歴史的意義を問い直そうとするものです。

(公式サイトより引用)
というもので、家電から始まって住宅設備に至るパナソニックの企業姿勢(昨今「デザイン」にも力をいれていることを含め。「night color」の広告展開は凄かった*1し、ミラノサローネのパンフもやけにカッコヨカッタ。)が伺えます。
バウハウスの「合理主義」を「合理的生活スタイル」として見直し、「新しい女性像、新しい生活様式」として提示するこの切り口、ナイス!これまで語られてきたテンプレ的なものではなく、バウハウスの精神を抽出して展開されていました。

これまで埋もれがちだった織物工房での女子学生の活躍をフィーチャーしたり、バウハウスでの日常生活を捉えた写真もいちいちカッコイイ。構図がズバッと決まってるの。学生証に押されたハンコまでもカッコ良くって、欲しくなる〜。

そのほかバウハウス内で一時流行った「マスダスナン」という生活運動の紹介が。呼吸法や瞑想、簡単な体操、食事療法などヨガみたいなものだそう。極端な菜食主義でニンニクを大量摂取し、生徒たちの息が臭かったとか倒れる人続出、という件に笑ってしまったよ。
ずらり並べられた食器やコーヒーメーカーなどのキッチン用品は美しい(合理的かもしれんが、洗うのコワイ)。単純に見ていて楽しいな。積み重ね可能な四角いガラス製の保存容器のデザインなど、今も引き継がれているものもあることがスゴい。
最後、キッチンの復元展示があったけれど、私はやっぱり前半の展示が興奮しました。どこかでもアトリエとか「1/1模型」の展示があったけれど、変に新しい作った感があるのは否めないので入り込めないんだよな。。。

なにはともあれ、ここの美術館は汐留という場所も手伝ってイマイチ盛り上がらないけど、地味に良い展示をやっていて、素晴らしいです。

「夢みる家具 森谷延雄の世界 展」

夢みる家具 森谷延雄の世界 (INAX BOOKLET)

夢みる家具 森谷延雄の世界 (INAX BOOKLET)

INAXギャラリーにて。大正時代の家具デザイナー・森谷延雄が33歳という若さで夭折しながらも残した膨大な仕事を展示。このタイトルに表されているように、うっとりする美しさでした。
滑らかな曲線を描く家具からはメロディが流れだす。図面を引く前に、数値に出せない彼の感覚そのものがあるからこその、やわらかな存在感。カタチや貼られた布の模様・色、ほうっと息をもらしてしまい、こころは踊り出す。なんてロマンチック!デコラティブではなくシンプルで、夢見てるけどストイック。繊細で研ぎ澄まされている。
だからなのかしら…次第に見ていてキリキリと切なくなって、胸の奥が痛くなって、きゅうっとつらいきもちで出てしまった…。狭くて天井が低い会場の空間に閉じ込められて息が出来ない感じ。ああ、またどこかで見たいな。。。


この2つの展示は共に「家のなか」が舞台であり、新しい世界を夢見た人々が貫いた「理想」の提示方法として、とてもよかったです。

*1: