夏の始まり夏の夕暮れ

7月になった。既に強烈な暑さが続いていて、汗は止まらないし、ちょっと先でも歩くのが億劫になるし、家ではもっぱら北側の風が通る台所にいるようになったし、生活がすっかり変わってしまった。こんにちは、夏。

Mummer

Mummer

このアルバムは夏の定番。ぽあんぽあんと揺らぎ溶けていく。
馴染みのカレー屋は「初夏の野菜カレー」が「夏の野菜カレー」に変わって茄子がたっぷりになった。スーパーや八百屋では桃やさくらんぼ、西瓜にトウモロコシが並んでる。


先日見に行った布作家さんの展示は、団地のなかで行われた。16時過ぎ、まだまだ強い日差しが差していて、ひどく暑い中、駅からテクテク(いやヨロヨロ)歩いて10〜15分はあっただろうか。私はもともとここを知っていたけれど、初めての人にとっては相当不安になりそうだなあ。錆びついた給水塔の向こうの区画にその棟はあって、分譲だからかきれいに整備されていた。
リフォームし4.5畳×2をぶち抜いた部屋いっぱいに白のオーガンジーが蚊帳のように吊るされていて、ところどころにパッチワークのようにカラフルな小さな布が付いている。部屋の片隅にはTシャツやブラウス、ニットなど何着かの古着があり、これを来場者は好きに切り取って、オーガンジーに縫いつけるという仕組み。そして次回の展示で使用するとのこと。私も縫うのは下手ながらも参加してみた。もういくつも縫い付けられていて、布の選択・切り取り方・縫い方に知らない誰かが見えてくるようで面白かった。まあ、私は適当で大雑把なのがまるわかりですがな…。思えばどの布をどう使うかはそのときの自分の直感が決めていて、その直感はこれまでの自分が創りだしたもので、布は誰かが使ってた服で、、、。
いろんな人のこれまでの「記憶」がつくりだした「その瞬間だけ」の感覚が時間を掛けて刻まれて、次に繋がっていく。それが重くなく、さらりと風にゆれている空間がとても素敵だった。緑を見下ろす部屋で、オーナーお手製のお茶をいただいて、とても美味しかったなあ。
棟の外へ出るとシャボン玉が飛んでいた。小学生の女の子がぷかりぷかりと空に浮かべ、男の子がそれを追いかける。姉弟だろうか。空は光が和らいできてる。あー夏の夕暮れだなあ。
この日見た展示は「風景」となって私のこころに刻まれる。夏の始まりの暑さに触れるたびに思い出すことだろう。