live at que

仕事納めの日。この半月、仕事が急遽増えないように予防線を張り、前倒しで片付けまくり、定時で「よいお年を!じゃっ!」と退社。下北へ急行した。


ギターの音色がいつも以上にとても美しく響いていた。ヤマジの指先の細かな動きによって弦が震え、それにより発せられた響きを漏らすこと無く忠実に、アンプが拡散していたようだった。歪んでも決して濁ることなく、クリアで、しなやかで、「音」なのに聴覚ではなく「視覚的」な気がした。ヤマジのギターワークには「キリキリと切り裂く」なんて形容が似あっていたけれど、今は違う。勿論そういう音も出せるけれど、心に届く方法は「斬りつける」鋭さだけではないのだと気付かされたなあ、この一年。音の感触がすこぶる優しかったり柔らかかったり、そういう音も心に”傷をつけて”くれるのだ。合間合間や曲が終わる時のフレーズにハッとさせられたり、穏やかな面持ちになったりもした。そういうところにも新しさがあった。


MCでの「ギター講座」も板につき、「サーストン・ムーアやケヴィン・シールズニール・ヤングエンケン」のギターを「ここをこうして」と言いながら見事に再現し、そのたびに「わー!」と興奮。ケヴィンの話のときはナガタさんに「一緒に見に行ったねー」と話したりするのも聞いていて楽しい。それから「リクエストはないですかー。今年でもうやらないよ」などとの問いかけに「トム・ヴァーレイン!」と言ってくれた方がいらっしゃり、繰りだされたフレーズにまた興奮。ギャッ。最後に、と自分の弾き方を聴かせてくれたのもよかったなあ。歪むあの感じ。ヤマジさんは純粋にただただギターを弾くことが好きなんだなあ。それを内に篭るでもなく、てらいなく伝えてくれて、良いなあ。


「dear prudence」、前回よりも音がまとまり各人が同じ円を描いていて、気持ちよかった。そしてアンコールの「9souls」、ああ、シンキバの30分ノンストップ素晴らしかったなあ…それからライブが延期になった3月11日のこと…。反復反復のリズムの中で今年一年の出来事がぐるぐるとして、歳の瀬にこうやって、これまでと変わること無くdipのライブを見ていることに有難く思う。
「大友さんが”今年のことは忘れちゃいけないから、オレは反忘年会だ”というようなことをいっていました」とヤマジは言った。この1年生き延びたなかで確実に変化した音を聴かせてくれたdipがそこにいた。
ナガタさんの存在はベーシスト云々の前に「精神性」としてとても深く息づいていることを感じさせるし、ナカニシさんのドラムはストイックで押し付けがましくなく、でも確かに、杭を打ってくれる。そのときに不意に出る揺らぎが好きだ。
ヤマジのギターが聴ければいい、わけじゃないのだ、私にとって。今更敢えて書かんでもだしシツコクてキモくてほんとに申し訳ないんだけど、dipが好きなんです、よ!(こんな発言は音甘映画館上と我が家でしかしませんから許して…)


帰りは下北駅前の喧騒から逃れたくて電車に乗らず、裏通りをずっとずっと歩いた。気持ちよい帰り道だった。来年もそんな夜を過ごせますように。
5月3日のclub251 での「bend your head〜she cracked〜sludge」
8月13日のシンキバでの「30分即興」
10月25日のclub251での「it's too late〜dear prudence」
そしてヤマソロでは9月16日のurga で聴いた「helpless」カバー
が特に強く印象に残っています。

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対バンはunkieでした。初めて聴いたけれどカッコヨカッタ。最初の何曲かは「カッコイイけど私には重いかな」と思っていたけれど、中盤のウッドベースの曲(超絶ドラムソロもあるやつ)に圧倒された!演奏はめちゃくちゃ上手くて大人でクールなのに、ドラムのひとのMCが小2か!とツッコミいれたくなるほど微笑ましく楽しくさせてくれて、このアンバランスが今っぽいバンドだなー。