桐島、部活やめるってよ

空の青が薄くなり、雲の形が変わってきた。
早く観に行きたいくらい気になっていたのは監督や主演俳優のためではなく、真魚八重子さんが呟きに載せた言葉が印象的だったから。それ以外情報を入れていなかったので、映画としての構成やら登場人物の構成やらにびっくりした。
ほんっとにすごく面白くて素晴らしかった。とっても好き。愛すべき映画。不特定多数が集まる映画館*1で見るのが良いハズ。折しも世間は夏休み、そんな気分がどことなく感じられる夏の終わりの甘酸っぱさの中で是非!
以下念のため未見のひとは読まないことをおすすめします。


高2の、だからこその、視線の先、言葉の裏、足の行き先、気持ちの行方、聞こえる音、聞こえない音、学校という箱の中の。
そういうのがきちん、と映像として然るべき描き方で表され、会話もすっと入ってくる。そうやって積み重なったモノがガラっと音を立てる屋上の光景(八重子さん曰く「屋上映画」って納得)!そこに絡む吹奏楽の演奏の高なり!ああ、なんだかワケわからないきもちになった。そして、ここで終わらないのがすごく良かった。そして日常は続く。どの年代の、誰に対しても、誠実な描き方。
登場人物の誰かに共鳴することもなく遠い眼差しで、でもかなり前のめりで見ていた私は、あのころどういう子であっただろうか。地方都市にある自由な校風の進学校の、いろんなタイプの人が「フラットに」存在していたハコの中で、何も成せない私にとっては学校の外に居場所があることが救いだったのだと思う。まあともあれ、遥か彼方の自分の姿というのは幾分フィルターがかかるものだし、ね。


穏やかで変わらない日常の中で突如奔走させられる人/別段変わらない人、目に見えないもの/正解のないものに対してのそれぞれの温度差はツイッターのTLのようだったなあ。
それにしてもラストの余韻は、エンドロールの唄で無残に壊されてしまった。それこそ「エレファント」式(桐島の存在はまさに”エレファント”、だねえ!)に終わってくれてたら!そのままひと気のないビルを抜けて渋谷の雑踏に消えたかったな。音の使い方にもこだわりが感じられただけに、ざんねん。

今、大きな雷が落ちて雨がひどく強く降ってきた。数時間で止むだろう。虹など出ないし、ただ外へ出るだけ。それだけ。

*1:上映館、渋谷東急?ドコソレ? え?クロスタワー?え、東邦生命ビルなの!と気付くと同時に、ちょっと懐かしい気分になった。久々に来たけど、”古き良き”な落ち着きある暗さでいいわあ。最近の白い照明がキツイ映画館はツライ。