「ニンゲン合格」

会社帰りに軽くご飯、ガスパチョ冷たくて美味しかった。渋谷でタワー→ブックセンター→ハンズ→ユニオン、定番黄金コース。ゆっくり何カ所も回れるのは今夜はレイトショーを見るから。元HMVの裏あたりからドンキの前のギラギラを早足で駆け抜けてオーディトリウム。ここの、上映前後の館内がそろそろと暗くなり、そろそろと明るくなる、微妙なグラデーションがとても好き。

ニンゲン合格 [DVD]

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黒沢清監督の「ニンゲン合格」。スクリーンで見たのは初めて。画質がやけにざらっとしてて雰囲気が最近見た80年代映画くらいに古っぽく感じる。それと、音がやけに大きい!蛍光灯のジィー…ジィー…って音や、室内をドタバタ歩く音が存在感を増していた。
今改めて見ると、テーマと画作りはまさに「お手本」のよう。その後も繰り返し、研ぎすまされていくのだなあ。幾度もぐっときたりハッとしたりゾッとしたり。積み重ねた知識が血肉になっているのだけど、感覚的にバシッと決めているようにも思える、センスとでもいうか。
浮かび上げる「空気」。それこそが主役だといわんばかりに私の心の中に蓄積していることに気づかされる。なんとも奇妙で不穏さが漂うのに、可笑しくて馬鹿馬鹿しくって、そして切ない。家族とは、自己証明とは、そんな問いかけを出発点にしてこのようなストーリーの映画がつくられることが面白い。家族が集まった2つのシーンがひどく象徴的だった。
西島さんや麻生さんの髪型や服装に見て取れる90年代後半な若さがチョット気恥ずかしくもあり、エンドロールで衣装協力:paravionの名に気付き、泣く。うう。公開は1999年かあ。
黒沢清監督の映画には「嘘」がいっぱいあって、それを楽しむところがある。でも今の世の中は、「想像上の嘘」を認めないような傾向が感じられる。かといって世間には大きな嘘がはびこっているし、ネット上でも嘘は必要不可欠な部分があり、それらがストレスになっているかのよう。「想像力の産物」と「嘘の善し悪し」が混ぜこぜになっていて、やいのやいの可視化されるから息苦しい。