郊外・世田谷

世田谷区は住宅地として今もたくさんのひとが暮らしているけれど、かつては政財界人の別邸が数多く建てられていたそうです。多摩川に近い国分寺崖線沿いは高台で富士山も望めるように眺めも良く、緑に恵まれた土地なのです。

こちらは静嘉堂文庫。三菱財閥の第2代目岩崎弥之助が所有した庭園と遺品の古美術コレクションがある。都内には岩崎家の所有地であった文化施設がとても多いけれど、今と違ってただお金を稼ぐだけではないところがほんとうに素晴らしい。

ジョサイア・コンドル設計による廟ってスゴいよ…ね…。



庭園は武蔵野の雑木林の面影が今も感じられる鬱蒼としたつくり。

階段を降りると・・・


湧水が流れる瑞々しい光が溢れていてその輝きが胸に刺さる。しばし立ち尽くしてぼーっとしてしまった。


ここを出てもう少し歩くと

旧小坂家住宅。実業家・政治家の小坂順造の別邸として昭和13年に建てられたもの。本邸は渋谷区にあったものの戦災で焼失したため、この別邸を本邸としたそう。
『小坂氏は長野市の生まれで、信濃銀行取締役、信濃毎日新聞社取締役社長などを歴任した』ってへええええ!私の地元は長野なので一気に親近感・・・!
wiki → 「旧小坂家住宅




ここのお庭も雑木林を利用して起伏あるつくり。

邸宅内は見学可能なので入ってみると

玄関土間は吹き抜けで古民家風。長野の実家の雰囲気を取り入れたそう。

花のしつらえが見事……

落ち着いたとても素敵な室内。


茶室。

光の入り具合がとてもいいなあ。

ダイニングと思ったら書斎として利用していたそう。

寄木作りの床板の輝き。

マントルピースの上には仏像が置かれていたらしい。

洋室だけど和の装いが。

窓からの景色もよいなあ。


こちらは寝室。


ソファからの眺め。向こうに多摩川が見えるのです。

美しいお屋敷はいるだけでホレボレとしてしまうだけでなく、気持ちがしゃきっとする凛とした佇まいもあり、住んでいた方の姿勢が伺えるようでした。
このような別邸は世田谷区内に数多く建てられていましたが、現存するのはここのみだそう。平成11年11月に世田谷区の有形文化財に指定されています。
最近ますますこういったお屋敷が取り壊され複数の狭小住宅が建て売りされているけれど、その街をつくり出した自然と歴史が次世代へ継承されるような取り組みがもっと盛んになればと思うのです。




かつて列車が走った道を歩いて二子玉川駅へ。