最近見た展覧会の記録

鈴木理策 「水鏡」/ Gallery koyanagi
オペラシティでの展示と同シリーズなのに、暗く天井が低い場内だと踏み入れ方が変化するのが興味深い。作品が手を広げていない感じ。一歩づつ作品に近づいていく。そうして目に入ったときの「あ、」っていう瞬間の心のブレがそのまま写真に表れていて、まさに「水鏡」だった。そのブレに酷く心を震わされる。


・飯沼 珠実写真展 / FROM LE CORBUSIER TO MAEKAWA
前川國男の建築を被写体にした作品。建築物を撮影しようとすると、建物そのものをきっちりと切り取ることに主眼が置かれがちだけど、その建物が在る場の空気全体を救い上げている。前川建築の「直線」とそれに被る樹々、包み込む陽射しが美しい。前川氏の想いを汲み取り、時を超えて対話しているようだった。洗練された佇まいも良いなあ。「建築を撮っていたはずだが、それはどうやら人間を撮ることと、ほとんど同じことのようなのだ。」という文章に納得。今回が個展としては確か初めてのようで、今後活躍の幅を広げられるのではないだろうか。 新宿ニコンサロンにて。   http://www.nikon-image.com/activity/salon/exhibition/2015/09_shinjyuku.html


上田義彦写真展 / A Life with Camera
デビュー以来35年間の写真という、膨大な数の作品をナントモ贅沢に展示し、さすがに「ここの空間」をよくわかっているからこその使いこなし方。人物と風景、額装やサイズのセレクトまで、素晴らしい。流れていく時間の中で上田義彦がレンズ越しにひゅっと引き出した一瞬。静謐に留められたやわらかな空気はたおやかに力強い。35年の間、上田さんが過ごした時間や出逢った人々と風景をひとつの空間で味わわせていただいて、とても豊かなひとときだった。


木村伊兵衛写真賞40周年記念展
川崎市民ミュージアムにて。1975年の第一回から順に見るので、「時代の色」の変遷がクッキリしてるのが興味深かった。やっぱり写真ってその時の空気を切り取るのだなあ。90年代の畠山直哉都築響一ホンマタカシ鈴木理策!と来て、2000年のHIROMIX蜷川実花長島有里枝!んで川内倫子!って流れはマジでドーンドーンドーン!ってスターマイン撃ちまくりな感じだわね、世代的に……。あと自分の好みも如実に表れて、時代ごとに好きなタイプの傾向がある。やっぱり対象ににじり寄り過ぎない視点が好き。鈴木理策さんのは最新作を見たばかりだからよけいに印象深く、しかも恐山をテーマにしており、去年自分が行った時の記憶が立ち上がり追随してきて、すごく良かったナア。あの方もこの方も受賞してたの?って驚きも多く、最初っから凄いなーと感嘆しっぱなしだったし、今回の展示で新たな発見も多かった。教科書的な内容だから、もっとアクセス良い場所で開催されてると盛り上がったと思うのだけど・・・
http://dot.asahi.com/asahicameranet/kimuraihei/list/index.html


・近代杉並の発展と浴風会
永福町下車、テクテク歩いて杉並区郷土資料館。以前このあたりに住んでいたので久しぶり。こじまりとした展示ながら資料を眺めるだけで楽しくて。ガラスケース越しだと路線図の文字などがさすがに読みにくく、もっと間近で見たいなあとは思うけど、じっくり眺めて思いを馳せる。