- アーティスト: CORNELIUS
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2017/06/28
- メディア: CD
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今作でまず驚かされたのは、発売決定でアップされたCornelius新ロゴの筆記体とジャケの銅版画から伝わるイメージだった。それだけで小山田くんはこれまでにないフェーズであることを伝えようとしているのだとわかる。その後銅版画は叔父様である中林忠良氏の作品と知ると、以前読んだインタビュー(当時書いた記録を再掲すると ”小山田くんが「(お父様が亡くなったことで)親戚の方々との交流を持ち、見せてもらった家系図で”自分は突然ポッと生まれ落ちたわけじゃないんだ”と気付かされた」と言っていたことにも驚いた” )に繋がり、感慨深くなる。
「あなたがいるなら」を7インチで初めて聴いたときは、ふっと体が浮き上がるような溶けるような、どきどきしながら穏やかになるような、「なんだろうこのかんじ」になった。この曲がアルバム1曲目で、スピーカーはfoatexのバックロードホーンで同じなのに、CDだと出音に驚いた。音の出力と分離、配置のクッキリさがズドンとやってきて脳内に鮮明に刻まれるから、頭の中がオカシクなりそうだった。彼岸のようで未来のようで、空恐ろしくて、「69/96」とは違う「果て」を感じてしまった。聴き方で全く異なる音触が凄まじい。
全体通して「唄ものである」といえるけれど、素のメロディはシンプルなポップミュージックなのにものすごく異型の音楽。
まりん曰く「頻繁に聴いては勿体無い音楽」との言葉に同意だけど、それでも一度聴いただけでは掴めなくて、スピーカーを変えてもう一度、日をあらためてもう一度、と既に何回も聴いてしまっている。聴くたびに心の違う分が動く不思議さよ。
事前のインタビューではしきりに自身の「加齢」が影響していることを話していて、そういう歳になったのだなあと我が身を振り返りながら痛感させられたのだけど、音の制作自体に「歳を重ねた故」のやり方と発見を感じる。それはかつてよく着ていたけれど抽斗に仕舞っていた服を、「今の自分に合わせて」着こなすことにも近しい気がする。新しいものを見つけたよ今!ではなくて。そういう意味で参照アーカイブはレコ屋ではなく自分ちにあったよね、みたいな。この10年強、YMO人脈と親密になることで「どうやって歳を取るか」を考えさせられたのかもしれない。
小山田くんがイメージする理想があって、それをエンジニアやデザイナーたちが形にしていく。そんな共同作業が見事だなあって思う。ライブでのバンドメンバーも「これを生でやるのか!」と驚愕しながら練習をストイックに重ねて実現させるのだものね。
次回作は今回ほど遅くならない(だって10年後なんて小山田圭吾もうすぐ60歳!)というけれど、そのときも今とおなじように聴くことができるようにしたいものだ、な。ね。