トラスト・ミー

ハル・ハートリー作品、再びのリバイバルは前回なかった「トラスト・ミー」「ヘンリー・フール・トリロジー」を上映。今回はSNSでの公式サイトが熱心だし、クラウドファンディングによるソフト化もあったせいか、「観客が自分より上の人ばかり…?」なこともなく、初めてハル・ハートリー作品に触れた人も多いのかもしれない。上映館のアップリンクは席数が少ないので「満席」と言われることも多いのも、話題性が上がってよかったのでは。今回は20代の若者がある程度いるとしたら「90年代に70年代の映画を見てカッコイイと思ってたのと同じ感覚と思うと動揺する」という意見をネット上で見かけて、頷くしか無い……。4年前の前回「シンプルメン」上映で”希子ちゃんが「エリナちゃんの前髪パッツンにアヒル口、ボーダー&革ジャンがカワイイ!」などと言ったりしてないのかしら”と書いたけど、今どうなのかしら。


2週間前の金曜の夜。「トラスト・ミー」を見た。いつぶりなのか忘れてしまったけれど、ずっと心に残してきた宝物のような感覚はそのまま2018年に解凍された。冒頭からリズムが刻まれる。タタタ!と切り込んで、ゆるやかな流れが生まれ、フッと刺す小さな火花のような瞬間、ラストシーンの心の底がふわっと浮上する感覚。とても「音楽」的な映画。エイドリアン・シェリーがもう!ほんとに!愛らしい。ラストシーンのまなざしと佇まい。最後の最後に加えられた監督からの言葉に泣けた。ハル・ハートリー作品の、優しくて真摯でナイーブで、フラットで冷静なまなざし。どうにも不器用にしか生きられない、うまく立ち回れない、でも信じられる何かがあるだけでいいんだという切なる想い。スッと心が浮き上がるこの感覚はいったいなんなのだろうといつも思う。