ぽかん

水曜日、雨降る朝。どんより重い体をだらだらひきづり電車に乗って、溜息付いて辿り着いた会社近くのコーヒーチェーン店で、「ぽかん 07号」を読む。四角く小さなかたちが愛おしい。

灯りがともるテーブルを囲みながら、3人それぞれが読む。誰かが書き留めた想いを時間を超えて受け取る。そんな、表紙に描かれた世界観が頁を開けば広がっていく。体の重さを忘れたひとときだった。11人の書き手が寄せていらっしゃる文章はそれぞれ染み入り、最後に編集人 真治彩さんの澄んだ想いで祈るようにまとめられ、背筋が伸びつつもやわらかな気持ちに満たされる。図らずも11人の文章の水底に統一して流れる水を呼び込んだのは、真治さんだからこそだろう。
誰かが何かについて綴った言葉、音、絵画、映画。その何かは既に消失したものだとしても、誰かへと受け継がれ、残る。何か、は誰かにとっての何か、になり、そしてまた誰かにとっての何かになり、残るのだ。

誰かの大切な何か、を知ることはこの世を生きるうえでとても大切なことだと、今あらためて思う。そうすればわたしたちは自分の知らないものであっても大切にしあうのではないか。なんだか大袈裟な物言いになったけれど、あらゆるものが軽視され消費されていくさまを目の当たりにする機会が増えて、ふとそんな想いを記してしまった。
購入方法のひとつとして、恵文社さんのネットショップを紹介します。
http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000022699/b_lit_bun/page1/order/


表紙の絵から受け取るイメージが、私が常に想っていることのようでハッとする。
同じ机に向かいあっていても、それぞれ過ごす。中心の灯火に触ることはなく一定の距離を保ち、その光を受け止めつつも、わたしたちはひとりだ。群れ合うことはしない。受け止めた光は私のなかで静かに灯り続ける。その灯りが消えないようにと。そうやって、日々歩いている。



裏表紙のこちらや表2の絵がまた愛らしいの。



豪雨被害が拡大していて、報道を見るたびに胸が痛くなる。どうか、少しでも早く平穏な日々が戻りますよう。言葉に綴り、祈る。今日は七夕。