岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟

Librarie6での展示もぴったりだったけれど、まさか東京都庭園美術館で見ることが出来るなんて。建物が醸し出す佇まいと呼応する作品たち。視覚が捉えたものと吸い込む空気がぐるりと体内を巡って、息が止まることを繰り返し、繰り返し。気品ある純粋無垢なモノクロームの、繊細な輝きを放つ結晶がそこにあったのです。当時のディオールバレンシアガのドレスも展示されているのも素敵で、朝香宮邸の夜会に迷い込む幻想に包まれる奇跡のような時間でした。
うっとりと夢見心地になったものだから、帰宅後読んだインタビューには泣きそうになりました。僅か数年の輝きが茶箱にひっそりと眠っていたのです。
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夜間開館がある日に再訪しました。桜が満開の夜でした。


「黒天鵞絨のカーテンは、そのとき、わずかにそよいだ。」中井英夫の”虚無への供物”の冒頭を思い起こす世界が広がり、昼間に見た前回よりも、スッと体に染み込んできたのです。
瀧口修造が送った手紙の言葉「いつまでもあの純粋な気持ちを忘れないでください。それがコラージュであろうがなんであろうがかまいません」が胸に突き刺さります。声高に主張されたわけではなく、作家として生きようともされなかったにもかかわらず、時代を超えて”発見”され、私たちの心に触れるのは、岡上さんがたおやかな気概を持っているからなのでしょう。御本人の気質そのものであって、純粋な気持ちを持ち続けてきた証なのだと思うのです。