オガールにみるこれからの「街」

盛岡旅日記、ここで盛岡以外の街のお話を。

まちづくりな話題を追えば上がるのが、岩手県紫波町にオープンした官民複合施設「オガール」だ。盛岡から近いため、今回合わせて訪問することに。
town.ogal.jp
www.huffingtonpost.jp


夕方、盛岡駅から東北本線各停で南へ20分。帰宅時刻だからか学生など若者が多い車内。紫波中央駅で下車すると周囲の殆どの人々が一緒に降りてビックリした。改札を出ると車で迎えにきている人も数名いるものの、たいていは自転車か歩きだった。
f:id:mikk:20190916095220j:plain
駅前ロータリーを抜けて最初の交差点真ん前に「オガール」はあり、それを挟むように新しい分譲住宅が並んでいた。
f:id:mikk:20190916095303j:plain
盛岡からの通勤通学圏であり、ファミリー層が住む街だと実感したのだった。
f:id:mikk:20190916095106j:plain
オガールの施設棟のあいだは草地が広がるスペースで屋根付きベンチがあり、小学生がポケモンカードで遊んでいたり女子高校生がお喋りしていた。秘密基地のようでかわいかった。子供の頃の記憶として残るだろうなと思えた。

f:id:mikk:20190916095750j:plain
f:id:mikk:20190916095804j:plain:w350
複合施設「オガールプラザ」には図書館、産直販売所、カフェに居酒屋が並び、宿泊施設と日本初というバレーボール専用体育館や
f:id:mikk:20190916095824j:plain
更に岩手県サッカー協会運営によるサッカー場があり、日々の練習や合宿として定期使用されている。ハコを「つかう」ことが住民だけではなく、外部利用者視点でも考えられているから、継続して「稼ぐ」ことが出来るのだ。
そして市役所がある。
f:id:mikk:20190916100806j:plain

駅前にこれだけの施設があるなんて。重要なのは、整備する際に住民への働きかけを長年かけて丁寧に行い、収支を計って見合う施設をつくり、維持管理し継続していくための仕組みをつくっていること。”補助金めいっぱい使ってハコを作って終わり”ではなく、「住みたくなる街」をつくり、実際に不動産価値が上がっているのだ。
suumo.jp


東京近郊にも新興住宅地は多く造成されているけれど、どこも駅から遠く離れて「車がないと生活できない」距離にあり、「寝に帰る」街でしかない。高齢化し買い物やインフラ整備も行き届かない「限界集落」問題は既に上がっているのに、未だに同じような住宅街がつくられている。
しかしオガールはそうはならないような取り組みが当初からされているし、何より盛岡から20分の駅の真ん前にある。しかもここは、1997年に駅前開発のために町が買収したものの計画が頓挫して以来、塩漬けになっていた土地だそうで、今のこの光景を目の当たりにするとちょっと震えますよね・・・。


昨今「まちづくり」が話題になるなかで、私は日本各地の都市を旅して「ハコ」だけの街並みを見てきた。よく「成功例」として取り上げられるものの実際に行くと、有名建築家などの冠が付いて確かに建築物としては見事なのかもしれないけれど「テナント募集中」だったり、閑散として人通りが無かったり、現在進行系の中身が無いような場所ばかりだった。

オガールの図書館は広くはないけれど、暮らしの中でちょっと立ち寄って、今知りたいことをスムーズに手に取れるような配慮がされていた。図書館には「農業支援コーナー」が充実していた。先に入った隣接する産直所の品揃えで、紫波町は果物などの農業が盛んだとわかったし、売り場には農作物とともに図書館員による「レシピ本」の紹介がされていたことが印象的だった。他にも「音楽コーナー」は蔵書数の割にコアな書籍があったし、バンドスコアが大量にあって、館内の音楽スタジオ利用を促すようになっていた。元々、盛岡には目利きの効いた”町の書店”や”町のレコード店”が多くあり、図書館が「今話題の小説を貸りる場所」ではなく、「この町で暮らす人々が、暮らしを更に豊かにするためのキッカケや広がりを得る場所」として機能しているようだった。太田市図書館の上辺だけのフンイキにげんなりしたのとは違うよね・・・(行ったもののビックリしすぎて、ここに記録すらしなかった)
project.nikkeibp.co.jp


さて、この日は「オガールイン」に泊まりました。ちょうどバレーボールの合宿があり通常の部屋が取れなかったため離れになった、のだけど、この部屋!
f:id:mikk:20190916110526j:plain
f:id:mikk:20190916110552j:plain
f:id:mikk:20190916110605j:plain
なんつうオシャレさ!どんだけラグジュアリーなの!さぞかしお高いんでしょう?とお思いのアナタ、なんと!一部屋15000円ですよ。勿論、いつも利用するビジネスホテル素泊まりよりは全ッ然高いけど、この広さと設備ならばお得感しかない。キッチンもあって、産直所の安い野菜と果物を買って食べるのもありだなー。
f:id:mikk:20190916111240j:plain
夕暮れがとても美しくて、広がる空が見える生活はいいな。このあとサッカーを見に行ったり、周辺をお散歩した。


そうそう、「オガール」ってネーミングを先に知ったので、この町が「紫波町」と知って、「ええ!”オガなんとか”って町名じゃないの!なんでこんな名前が付いたの?」と思っていたら、フランス語で「駅」を意味する「Gare」(ガール)と紫波の方言で「成長」を意味する「おがる」を合わせて名付けられたそう。なぜフランス語?というのもアレですけど、この手の施設ってたいてい町名そのものを使ったりするじゃあないですか。紫波なら「シワール」的な。なので、ちょっとびっくり。
次の朝は、駅向こう側のエリアへ行ってみた。かつては奥州街道の宿場町であった街。車が多く行き交う国道と、一歩入ると古くからの商店が並ぶ街。それは全国津々浦々で見かけてきた景色だった。空き家バンクなどで新たな動きもあるようですが、オガール側とどのように共存していくのだろうか。


2012年にオープンした「オガールプラザ」はいわば「テン年代」な試みの施設だといえる。では2020年代、その30年後、50年後・・・当初想定の維持管理や展開が机上の空論にならずに、激変する時代背景の中で次の世代へ継承され、紫波町に生き生きとした風が流れ続けるかどうか、そして続々と視察する全国の行政関係者がおらが町で如何に動くのか。


こんな街を体感したあとに、盛岡でこんな施設が出来たばかりだと知った。
morioka.keizai.biz
でたな、「にぎわい創出」・・・。
駅近くの開運橋側の緑地を整備し、飲食店を設けたそうでね。流行りのコンテナづかいで。
f:id:mikk:20190916114204j:plain
f:id:mikk:20190916114224j:plain
f:id:mikk:20190916114241j:plain
なんかこう、盛岡という街を考えずにトーキョーのコンサルがパワポで見せたイメージだけをここに置きました感タップリでねえ。雪降ったらどうするんだろう。。。
f:id:mikk:20190916114256j:plain
車道側から見ると、コンテナ裏側の醜さが・・・。
住民説明をきちんとしないまま完成し、話が違うと既に問題になってるそうで、納得。儲からなかったらコンテナばらして撤収ですよね、わかります。うーーーん。


ところで、木伏緑地にもオガールにも「バーベキュー」場があるんだけど、バーベキューってそんなにみんな好きなのかしら?家族や友達と、手っ取り早くイベント感出るから? 東京でも、とある新興住宅地の広告で「週末はバーベキューでコミュニティーが生まれます!」ってウリにしてたのを見ていたので、そんなにみんなバーベキューに夢描いてるのって不思議で仕方がない。子供の頃入らされたガールスカウトキャンプファイヤーがホントに嫌だったワタシには、理解できないのです。


人口がどんどん減っていく反面、負担は増える一方のこれからの日本で、「街」とは「人々の暮らし」とはどうあるべきなのか。紫波町の試みは始まったばかりだ。