"We'll be the passenger"

12月1日(日)Zher the ZOO YOYOGIにて。
近藤智洋さんとのヤマソロは、いつも良き時間になる。近藤さんがヤマジさんの奥底を引き出してくれる。一昨日のdipでは描かれなかった部分であり、グッと胸を突かれたライブだった。このあいだ残した部分にパチンとハマったような、dipへの道筋が表れていた。(はい、以下長々と綴ります・・・)


最初は近藤さんから。以前とちょい声色が変わった気がする。甘さよりもタフな感触。今月末dipと対バンする近藤さんのバンドmy funny hitchhikerの曲、ギターかっこよいなー。と思ったところで、ピアノに移って演った曲がRIDEの「vapour trail」だったからビックリして椅子から落ちそうになった!何故、敢えての、ピアノ! シューでゲイザーなギターを置いて、「まさかの!ピアノで!RIDE!!!」広い世界だから他にもいるかもしれないけど、その発想は無かったよ!フィードバックなギターの波を取っ払うと切なく甘いメロディが残って、そのへんがRIDEのオリジネーターたる所以と改めて思う。近藤さんの唄声と相まって、良かった〜〜。

さてヤマジさん。思い出して驚くのは1曲めが「After The Gold Rush」だったってことで、そうだったっけ?と思っちゃうほどに意識してなかったからだ。「懐かしき若き日が〜」的な感情が一切沸かず、寧ろ新しささえあるような、カバーじゃなくてオリジナルとして聴いていたのです、私。恐らくそれは、ヤマジさんが今の自分をそのまま音に表していたからではないだろうか。

続けて戸川純「怒涛の恋愛」ヤプーズで純ちゃんのMCのバックで爪弾いているけど気が付いてもらえない…とのこと。ふふふ。ヤマジさんは女性ボーカルのこういう曲も似合うんだよねえ。エゴを剥いで楽曲の純粋な部分をスッと抜き出すからなのかな。
rooftop.cc 恐らく純ちゃんディレクションのポーズで撮られてるの、珍しい姿過ぎてかわいい・・・

”髪の毛をツンツン立ててた頃の曲”と、「water color」・・・!!!更に「Sunday Puffce 36℃」まで! ……ああ! 息が止まって、ただただ吸い込まれて、私は今とんでもない音を聴いている……と呆然とした。真空パックされた若き日のヒリヒリと壊れそうなほど透明なアオサが、30年経った今、こんな音色で、ギターと声で、奏でられるなんて。ループさせたフレーズのセンスも素敵で、声も無理なところが全然無い。成熟とも枯れるとも違い、若作りでもなく、2019年の空気を吸って吐いて鳴っていた。そのことに、震えてしまう。そのうえ「lung」まで!怠惰と諦念の塊を昇華させた演奏に、泣けた。

ラスト1曲ってとこで、”(持ち時間45分なのに)え、まだ30分しか経ってないの?! ”との言葉に、私もすっかり”永遠に”聴いている気分だったから驚いた。普通は逆で、「短く感じたけどそんなにやってたの?」ってのはあるけど、なんでだろ。”最後、15分やります”と「セル」は「天使」と溶け合いながら。やっぱり今回の演奏はいつもと違う。今思い返すと、強さがあった。ふわふわと拠り所なく漂ってるのではなく、溶けながら過去は今に続いていて、今ここよりも明日へ向けられていた。

最後は近藤さんとデュオ。急遽ゲストでドラムにKAZIさん。一昨日のdipに見に来てて、ヤマジさんにさらっと頼まれたらしい。ルースターズで始まって、ちゅうぶらんこの「まほうのじゅうたん」では途中で客として見に来てたモモさんすっかり酔いどれて乱入。こういうのこの頃多いね(笑)

ヤマジさんはリラックスムードで弾きまくるのだけど、話の流れで「いい日旅立ち」のイントロを弾きだして、そこから延々ギターでイントロ・ドン!になり、ピンク・レディー寺尾聰さだまさし(あとでアースシェイカーらへんとか、「恋はみずいろ」とか、エコバニもあった)など即座にテレテレテレっと爪弾いたから、ヤマジ50歳記念企画トークで ”バンド名や曲名が出てくるたびにパパっと弾いてくれた” のを思い出して、同時にベラさん思い出して、ううっとなった。ちなみにヤマジさんがやる歌謡曲セレクトに世代差を感じてしまい、、、私微妙にわからなかったりして、、、サビで右手で指差すフリ付きで(!)盛り上がった沢田研二の曲も知らなくてねえ・・・。んでも子供の頃に吸収したエッセンスが感じ取れて楽しい。70年代歌謡曲のギターはカッコいいな。

ヤマジさんが ”じゃあこの曲なら歌詞わかるでしょ” と爪弾かれたビートルズの「Blackbird」に ”ヤマジは空に飛んでった〜〜” と唄っちゃう近藤さんのボケっぷりがすんごく良くってねえ。そういうところがヤマジさんが心を開く所以なのだろうなあと思ったりしちゃう。ヤマソロレコーディングが三軒茶屋のゴリラビルにあった(!!!)スタジオだと聞き出してくれたり、ヤマジさんが結界外してついつい喋っちゃう雰囲気。

そして、「should i want or should i out」で、ああああと刺されて、溶けて、死んだ。泣いた……。あとでヤマジさんが”あの頃は末期だよ末期 ”と言ったけれど、あのひんやりとカラカラに乾いた、疲弊と投げやりが混然となった気分はそっと掬い上げられ、楽曲として結晶になって表現されていた。
 近 ”最後の、歌詞になっていない英語の部分あるでしょ?あれなんて言ってるのか教えてもらったんだけど"
 ヤ ”『so you won’t be afraid 'cause i see you』恐れるなってコトだよ”
 近 ” dipトリビュート盤のとき「13階段」をやったけど、この曲にしようかと迷ったくらい、大好きな曲なんだよね”
 ヤ ” 『灰色の脳細胞』って歌詞、あれポワロでしょ?って言及してくれたのは唯一近藤くんで ”
って会話に心のなかでオオ〜〜っと嬉しかった!


アンコールは”やってほしい曲ある?” で会場から”ルー・リード!”の声が上がるも”歌謡曲じゃないの?”と返されつつ、楽屋に歌詞カードある!とわざわざ取りに行ってからの「waiting for the men」、モモさんが入ってきてルースターズ「恋をしようよ」、モモさんは缶ビール一気呑みとかやりたい放題・・・見ているこっちは大笑いで。こんな雰囲気(身内ノリではないやつ)がヤマソロワークでは結構当たり前になった。そういうひとときがあるからこそ、ギターに没頭して極めることが出来、いいバランスで技と気持ちがフィードバックして音に表れるのだろう、きっと。