30年目の「sunday paffce」

91年は名盤多出な年ゆえ、こんなことしてたらキリがないのだけど、この作品についても書き留めておきたい。



楠本まき「kiss×××」を読みはじめたキッカケは思い出せない。連載開始の89年にマーガレットを読んでいたか記憶がなく、音楽雑誌のコラムなどで知ったのだろうか。CUREのLOVECATSで踊るシーンに衝撃を受けた。知ったばかりのバンドや知らないバンドの名前が登場し、繊細な描線で構築された美しくそして密やかなユーモアある世界に憧れた。

イメージCDがリリースされ、当時バイトしてたCDレンタルで店長に頼んで入荷してもらった。一発で好きになったバンドはなかったけれど、惹きつけられたのはヴェルヴェッツの「waiting for the man」カバーだった。これがdip the flagとの出会い。ちょうどヴェルヴェッツを聴きはじめた頃で、日曜午前の暇な時間帯によく掛けていたから嬉しかった。ヴェルヴェッツの怠い空気とは異なる、性急で細い刃みたいな音。


dip the flagも入荷してもらって聞いたけれど、暗いなー声が好きじゃないなーと思ってそんなに聴きこまなかった。
そして翌年、ミュージックマガジン小野島大が紹介したことで知ったのがこのアルバム。

dip the flagの人のソロなの?小野島さんの言葉に惹かれ、聴いた。ウッとした。当時聴いていた音楽とは遠く離れて、鳴っていた。

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あの頃出会って今もなお愛聴している盤はもちろんたくさんあるけれど、これは特別な一枚。今ライブで演奏しても、あの頃を携えたまま今の空気で鳴らしていることに驚かされる。北村さんのことを「感謝している」と述べていたけれど、そういう大人の存在は若き表現者には大切だと、歳を取るとつくづく思う。