LABO 12 dip oneman


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登場時の SEが変わった。ギターの弦1本1本の響きが「この空間」を調律し、背筋が伸びた。今日のライブはヤバいと昂る気持ちに“ krauteater”の出音が重なり移行した流れに泣きそうになった。
Stream Krauteater by Kazuhide Yamaji | Listen online for free on SoundCloud
最近お馴染みの曲だけどいつもと違う響きがあった。クラウトロックなパターンが正直後半はダレる時があるけれど、今日はアプローチが違って展開を楽しんだ。

ヤマジさんの表情も最初から晴れやかで、終始イイ表情だったことが確実に演奏に反映されていた。ギターの音色への偏執的な拘りから抜けた印象があった。
そう、「labo」ではなく「live」だった。
ライブならではの熱量とスタジオ録音的な作り込みが共存し、過去の楽曲も織り方が異なり同じシャツなのに生地が違うみたいだった。全般的にスッと加えられるフレーズのささやかな美しさが豊かさを産んでいたし、今までならばギターで押し切るところも3人のバランスが優先されていた。ラウドめな部分も中音域でやることで、不思議なサイケデリック感が抽出されていた。


ドラムとベースの「重さのある軽み」が際立っていた。ギターが引いてドラムがドドっと入ってくる瞬間だとかギターとドラムの掛け引きがあり、ベースはクールに安定してキープしていた。
新機軸なカバーもサイッコーだった。dipの印象に無いファンクなリズムだったから本当に驚いて、ヤマジさんは両手でグッと横ノリなリズムを切っているし、しかも日本語の歌詞でナガタさんがベース弾きながら歌うなんて!!強烈に!猛烈に!カッコよかった!嬉しくなっちゃう。誰の曲なんだろうと思ってたけど、E.D.P.S “tumin’ loose“と後で知る。


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ストパンクのコッチ方向の楽曲、全然聴いてないので新鮮!dipはこの手のグルーヴが無いのがファン層の偏りなのかなあと思うところはあったので、こういうのすごく良い!

その後の“ hollowgallow” がいつもと全く違って聞こえたことも発見だった。今日は選曲もこれまでにない流れで、前の曲によって次の曲の印象が変化する感じがずっとあった。

長年やり続ける曲の風合いも変わった。“serial”には尖った刃は無く、“no man break”の切ない憧憬は消え、“dread 204”の荒れてささくれた庭は枝葉を切り落とし、”nerve A10”の焦燥感は板野サーカス並みの美しい軌道を描いて空間を走り抜け、“faster,faster”のゴリゴリな押しはソリッドな佇まいになった。若さゆえの装飾は歳を経ても出せるタイムレスなスタンスから脱した場所にいた。そうそう“ superlovers in the sun“の堂々っぷりもよかったなあ。ナガタさんのコーラスもいいよねえ。旧曲はヤマジさんの歌唱力が上がったことで、グッとスタンダードな良さが際立った。
feu follet”はリズムの刻み方が今までと違い、この曲が意識したであろうポストロックとは異なる印象を受けた。この何年かでヤマジさんに刻まれた音の感覚がナガタさんとナカニシさんに伝播したのかな。


3人とも丁寧に音を描き、今までに見たことがない絵図に幾度もハッとした。“あの頃想像した”絵図とは全く異なることだろう。音なのに「観た」。アンコール“ lust for life”の最後、ドラムとベースでガーーーッと走り抜けていく列車にジャッ!とギターが飛び乗った瞬間が象徴的だった。ヤマジさんが引っ張って出来るのではない音像がそこにあった。


ライブは年1クラスだし、アルバム制作もツアーもフェスもやらないけれど、一般的な習わしに寄らない彼らだけのスタンスでやり続けるからこそ、時間は掛かるけれど深く深く潜った果ての到達点であり通過点だと思えたライブだった。



krauteater
serial
no man break
dread 204
nerver A10
perverse
superlovers in the sun
tumin’ loose(E.D.P.S)
hollowgallow
〈休憩〉
EVA
feu follet
duel
human flow
faster,faster
break on through(the doors)
〈encore〉
lilac accordion
lust for life

高円寺Highは音が良くていいライブハウスだなあ。