ヤマジカズヒデ&山根星子

またもやヤマジさんライブの話。3月3日(金)西早稲田BLAH BLAH BLAHにて。
共演の山根星子さんはタンジェリンドリームに在籍していることすら失礼ながら存じ上げず。経歴のすごさも惹きつける能力も凄まじいと知る。
qetic.jp


今回のライブは星子さんの「凱旋」で全15公演!そのラストがヤマジさんで、そもそも何故?と思っていたらヤマジさんがMCで「ニシモトタケシさんとベルリンでライブをした時にギターアンプを貸してくれた」ことがキッカケとのこと。こういう広がりって大事だなあ。ニシモトさんともベルリンで知り合ったんだっけ。やはりヤマジさんは日本のロック磁場から離れた活動をもっとしてもいいと思うのよ・・・


田畑満&三浦真樹のデュオも参加。会場はパブ形式で開演前は出演者も後方にいて知り合い同士で喋るフランクな雰囲気。19時を過ぎて「そろそろ始めるか」とタバタさんとマキさんが壇上に来て音が鳴ると、一気に変わる。
タバタさんはどっかりと座り怒涛の勢いで音を繰り出す。マキさんは細かでキリキリと硬質な音を生み続ける。旅をしているような音だった。旅のスタイルが違っていて、タバタさんは温泉に浸かって高温を放熱している感じ。マキさんは喜びに溢れながら歩いている感じ。ある意味はちゃめちゃで(笑)全く異なるのに重なり合う面白さ。


休憩挟んで、ヤマジさんと星子さん。星子さんは聡明さが感じられる佇まい。ヤマジさんと共に作り出す音像は水面を映し出していた。それぞれが落とす雫が漂い波紋が広がり重なり溶け合って、新たな波紋を生み出す様がなんとも気持ち良い。風景は絵画になり次第に動き出し映像が生まれた。タルコフスキーの映画を思い起こしたりもした。星子さんがひとり佇み屹然とつくりだす泉に離れつつ寄り添いながらも、ヤマジさんが作り出す音は確実に「ヤマジカズヒデ」の響きであり、2人が共鳴し合うと同時に個々に閃く光が美しかった。


最後は4人で。ヤマジさんが「グレン・ブランカみたいに弾こうかな」と反復反復で音を紡ぐ。4人それぞれが違うスタイルなのに不思議と同一性があるのは波動が同じだからだろうか。ふと、NYのファクトリーは毎晩こんな感じだったのかなと思った。言葉による意思疎通は必要ない。時折弦の響きにゾクっとしたりワクワクしたり、それにより自分にフィードバックされて生み出していく。今聴いている音はこの瞬間にしか存在しなく、空気に浮かんでは消えていく。なんて贅沢なんだろう。それにしても星子さんは初めての3人と臆することないタフさがありながらも圧を感じさせず、しなやかな音作り。3人は星子さんを軸に強烈な個を響かせながら余韻がぶつかることなく、経験と人柄ゆえだろうか。


会場には満ち足りた感覚が広がっていた。外へ出て、路地を進むと月が浮かんでいた。ここの帰り道はいつもこんなふうに気持ち良いなあ。家の近くの木蓮も蕾が綻び白い花弁が見えたから一層嬉しくなって家に着いた。


追記3/5:星子さんの「Live Music Cinema」(著作権切れの無声映画に生演奏をあてて上映する)活動に、ヤマジさん参加してドイツ表現主義の映画をやってくれると嬉しいなあ。この日ヤマジさん、メトロポリスのTシャツ着てたし、そんな話してないかなあ。石橋英子さんも加わったら更に最強。絶対ハマる。


追記3/6:上述の「Live Music Cinema」はコチラです。見てて楽しい!
m.youtube.com


冒頭に挙げたインタビューで仰っていた、特に印象的な言葉を記します。

とにかくいろんな世界を見ることが大事ですよね。それはジャンル関係なく大事だと思います。だって、どこからインスピレーションを受けるか分からないじゃないですか。その時はグッときてなくても、後から思い出して気になることもあるし、出会った瞬間にグッとくることもあると思うんです。だから、いろんなものを見て欲しいですね、場所や人や物を。