「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」

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予告編「デイヴィッド・バーンがクリーニング店に置きっぱだったスーツを取りに来て、自転車で帰る」ってのがもう、泣ける。「アメリカン・ユートピア」のラストを思い出させるこういうセンスが素晴らしい。


今までIMAXで観たことないからこの機会に(つか、シネコンかあ)・・・と調べたところ、夜上映のみ!平日会社帰りに映画なんてもはや無理・・・!と思ったけど、『ライブと思えば!」(だってライブ映像鑑賞だし)その上「座って見てられる!」と気づき、よーし奮発しちゃうぞと「殿様席(エグゼクティブシート)」で鑑賞、席周りに余裕あると気持ちも楽ねー。とはいえトーキングヘッズをシネコンのフカフカ席で観てしまうことへの敗北感・・・


IMAXによるドーーーーン!感。ジェリー・ハリスンが監修したリマスターによる音はくっきり明確で、冒頭のデヴィッド・バーンの登場シーンから細かな音が浮き彫りになり、メンバーのバキバキとしたサウンドが心地よく響く。表情や手の動き、ステージの隅まで眺められて楽しい。
ライブを落ち着いて見られるってほんと良い。ライブ会場にいるような感覚になるけれど、クッキリと細部まで鮮明な立体的音像は現実のライブ会場ではこんなふうに絶対聴けないし、実際にこのライブを観てる気になるけどこんな目線では絶対に観れないし、歓声に包まれて自分も声を上げたくなるけど上げられない。極めて不思議な体感こそが「映画」だった。


トーキングヘッズはご存知の通りメンバーそれぞれが個性豊かで技術力も高い。それを「1バンド」として撮るのではなく、各メンバーの表情や仕草も的確に捉える映像は群像劇のようでもある。

スピーキング・イン・タングズ

スピーキング・イン・タングズ

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アルバム『Speaking in Tongues』を発表した83年12月にハリウッドのパンテージ・シアターで4日間のライブを行なったうち、3日間をジョナサン・デミが「アンサンブル映画」を意識して撮影、ベストカットをデミが"演奏面よりも視覚的側面で"選んで編集し「1夜のライブ仕立て」にしたのが『ストップ・メイキング・センス』。だからライブ映像として「臨場感」だけを抜き取ったのではなく、「映画作品」として成り立っていることがよくわかる。


今回の4Kに関する記事でこんなことを知る。
「バンド自ら制作資金を調達してた(からこそ版権が戻ってきた、しかも40周年目前に)」とか、レストアにあたり「オリジナルのネガフィルムとオーディオトラックがそれぞれ別の保管庫で眠っていたものが発見された」とか「1984年の段階で珍しく、バンドが音源をデジタルテープへと移し替えていた」というのもナルホド・・・奇跡が奇跡を呼ぶ。
『ストップ・メイキング・センス』4Kレストア版の驚くべき舞台裏 伝説のライブ映画はいかにして蘇ったか? | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

>ストリーミング配信だけだったら、アトモスで全編をリミックスしていたかどうか分からないよ。あれは空間オーディオだから、空間があることが重要なんだ
>「(リストアにあたり)修正できるテクノロジーはあった——でもどうして? この方がより人間らしい。それに、あのステージで起こっていたことの人間らしさこそ、ジョナサンが最も興味を引かれたことだったんだ」



トーキングヘッズを知ったのはミュージックマガジンからで、初めて聴いたのは高校の頃バイト先のお兄さんが好きなアルバムに「More Songs About Building And Food」を挙げてたからだった。解散後90年代はあまり語られず、ゼロ年代頭に登場してきたバンドにより(ポストパンリバイバル云々で)あらためて語られたというのが、個人的偏狭妄想印象で、「ストップ・メイキング・センス」自体はゼロ年代前半にリバイバルを見たのが最初、その後boidが配給権得て爆音映画祭ジョナサン・デミ追悼や「アメリカン・ユートピア」公開も相まって、何度か上映し鑑賞した記憶がある。
それがなんとまあ、夜のシネコン満席でトーキングヘッズを観てるなんて状況が信じられない!
boidの樋口さんが爆音映画祭の意義として「観た人が誰かにその凄さを語り、また誰かが『観てないの?』と伝えることにより、広がっていく」ことを言っていて、まさにソレだなあと思う。



余談:TOHOシネマズ7劇場にて「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」オールスタンディング上映会 開催決定!! || TOHOシネマズ
・ダンスOK スタンディング鑑賞で曲に合わせてダンシングOKです。
・声出しOK 応援、歓声、突っ込みなどOKです。
・音出しOK タンバリン、マラカス、拍手、手拍子などOKです。
サイリウム、ペンライト、応援グッズ持ち込み、ビッグジャケットなどコスプレOK

サイリウム、ペンライト、応援グッズ持ち込み 
さすがにコレする人いないだろよ・・・こういう上映増えたし作品自体に拠るだろうけど、オールドスタイルの身にはなかなかついていけないものがあるのことよ・・・