3月25日 ヤマジカズヒデ誕生日の恒例ライブ。画像のセットリストはヤマジさんがアップしたものを拝借。
年度末。仕事が部署異動になり、頭がそっちでいっぱいで全然集中できなかった。仕事のことばかり頭に浮かんでしまう状態で、久しぶりのunderwaterでさえも深く潜れず、ひとり水面で溺れている始末だった。漸く昂ったのはこれまた久しぶりのbent your headで、遠い荒野に飛ばされた。その荒野は昔みたいにすっからかんのあてどない荒地ではなく、輝いていた。このまま続いてやってくれないかなーと多分みんな思ってて、そのとおりにshe crackedやってくれたからサイコーだった。個人的には新曲に「3つそれぞれの」音が「明確な音色で」「絡み合う隙間」が無いことがしっくりこなくて、なんだか古い曲は喜ぶファンになってるな……長年ライブ行ったらここに必ず書き留めてきたけど今回は止めようかなと思っていた。
そんななか、こんなインタビューがアップされた。
インタビュアーの与田太郎さんの"人となり"と"dipとの歩みと距離感"が相まって、素晴らしい内容。
dipにいつも何かを期待してしまうのは同世代で同じような音楽に影響されてきたからなんだと思っていた。しかし今回はじめてしっかりとヤマジの話を聞いてdipに対する僕の考えの半分は当たっていたけど、半分はこちらの思い込みだったことがよくわかった。だからといってdipの音楽に期待する気持ちがなくなったわけではない、むしろより焦点が絞れたとも言える。
適当な物言いで斜に構えおそらくインタビュアー泣かせだと思わせるけど、数は多くない「ヤマジカズヒデインタビュー」で、漸く、初めて、腑に落ちたというか、ハッとさせられた。はぐらかすことなく答えてくれるヤマジさんを引き出す手腕に拍手。与田さんが過去の印象と変化した印象を忌憚なく語っていることも良い。
与田さん曰く
ー熱心なファンがずっと聴いてくれるのは、曲や演奏もそうだけどバンドの佇まいも含めてdipが伝えようとしている世界観に惹かれていることと、もしかしたらもっと核心に触れるんじゃないかという期待感がずっと持続してるからなんだと思う。うまくいえないけど、3人のメンバーが続けている理由もそこにあって、それがリスナーに伝わっているんじゃないかと。
こんなふうに表現してくれるの読んだら、ファンとして泣く。ありがとうございます・・・
ーこのあたりから、たとえばルースターズのメンバーとセッションしたりするよね。自分がずっと好きだったバンドのメンバーと一緒に演奏するのはどういう感じだった。
ヤマジ 感動するよね(笑)。でもあんまりファンって感じは出したくない、サインとか絶対にもらわない(笑)。
こういうところがすごく、ヤマジさんらしい。ジョニー・マーとの話もそうだけど。たいていこういうの、ゴリゴリ行って写真とサインもらってSNSにもアップして次に繋がるのが一般的なミュージシャンだと思うのよ(偏見)
ーミッシェルガン・エレファントは一緒にやったことある?
ヤマジ あるよ、彼らがブレイクする直前ぐらいに。こっちは暗黒時代で(笑)。あそこが分かれ目だと思った。まじめにやってる人たちと自分の。俺にとってはあれが象徴的なライブだったね(笑)。
本人もわかってるのね笑 それが今や一緒にライブしたりするんだから不思議な巡り合わせである。
あらためて気付くのは、ヤマジさんは「自分の時間」を生きているということだ。常に自分のペースだし自分から周囲にアプローチすることもない。それがこの時代で活きてきたと感じる。
新作にも感じたけど、dipの曲にはいい意味での型があるよね。それを慎重に構成しつつどうはみ出すのかという境界線での葛藤みたいなものが緊張感を生んでいてリアルに響く。
俺はdipでダニエル・ラノワがプロデュースしたようなアンビエント感というか陰影のあるサウンドを聴いてみたいとずっと思ってるよ。乾いたガレージ・サウンドもいいけど、ぜひ一度トライしてほしい。
与田さんのこの言葉に感じるのは、その「本質」と新譜での「新たな感覚」がバンドとしてまだ結実していないかも、というところ。そして最近のライブでのヤマジさんの艶やかな大胆さに対して、ベースとドラムに慎重さを感じてしまうので、「メンバー3人ではみだして」緊張感を孕みながら再構築してほしいと思っている。
次回は
dip "LABO 22+23"
06/26 (水) 京都磔磔(!!!)
06/28 (金) 高円寺HIGH
楽しみです!
〜追記 2024.4.13 新譜をあらためて聴くと、ЯECKが参加した"self rising flower"の圧は別格で、やっぱりボトムがガッチリしてグイグイ引っ張ってくの大事。もう1曲参加した"hollowgallow"もドシンとした聴きごたえで凄まじい。"kauteater"が飽きてきちゃうのはギターだけで引っ張っているのと、ロック気質な真面目さゆえかな……なんて思うのは、与田さんの言葉の奥にもどかしさを勝手に感じてしまったのと最近ゆらゆら帝国をあらためて聴き直したからかもしれない。