ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力

上野公園では他にもいくつも展示会が行われていて、フェルメールはひどく混雑していそうだなあとか淋派は何年か前に近代美術館での展示見たからまあいいか*1ーとかなんだかんだで、とりあえず大江戸線上野御徒町駅へ向かい、清澄白河駅で下車、現代美術館へ。

今年は日本人がブラジルに移住して100周年であることから「日本ブラジル交流年」として、これを記念したイベントがいくつも行われています。この展覧会はブラジルの作家作品を集めたもの。
日本の反対側にあるブラジルに行ったことなくても目に浮かぶ、熱帯の灼熱な太陽の輝き!鮮やかな色彩!沸き上がる血潮がドクドク感じられるよなお国柄に満ちたパワフルな作品の数々でした。
ブラジルといえばアート作品よりもサンバにボサノヴァ、音楽のほうが馴染み深いですが実際音楽を使ったインスタレーションがいくつもありました。
エリオ・オイチシカによる作品は、民族衣装にヒントを得たカラフルなマントがヘッドフォンとセットになって壁に掛けられています。その衣装を被りヘッドフォンからブラジル音楽を聴きながら楽しんで!踊って!という作品。他に誰もいなかったので恥ずかしがることなく(でもちと抑えめに)からだをくゆらし楽しみました。

アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスの作品は、赤い床に派手な模様の壁に囲まれた部屋。ここには無線のヘッドフォンがあって、四方八方から10枚ほどのブラジル音楽のアルバム〜カエターノ・ヴェローゾから最近のミュージシャンまで〜の音をキャッチして聴くのです。雑音がかなり入ってしまうのでナンですけど。部屋の中を歩き回るたびにいろんな楽曲が聴こえてきて、しばし聴き入ったり。この曲いいなーと思っても誰かわからないのが哀しかった(アルバム紹介もあったけど、どれかわかんないの!)。

フェルナンダ・タカイの"Insensatez"のPVも流れていました。このPVの衣装を手掛けたファッション・デザイナーのホナウド・フラガの作品としての展示です。

Onde Brilhem Os Olhos Seus

Onde Brilhem Os Olhos Seus

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そして大好きなエルネスト・ネトの作品は吹き抜けのホールに!寝転がって見上げる青い空。きもちよかった!

熱きパッション!ってテンションや有機的なフォルムが目につくなか、リジア ・パペの作品のように緊張感ある美しさには日本の侘び寂びを思い起こしました。

絵画を始め音楽、ファッション、建築、ブラジルのあらゆる「アート」が集結したボリュームある展示は、目耳鼻口、手足、からだ全体感覚全部で吸収するものばかりでとっても楽しかった。
帰ってきてサイトを見て知ったのですが、マントの作品をつくったエリオ・オイチシカは軍事政権下の60年代末にあった芸術運動、ブラジル・トロピカリア・ムーブメントの中心人物で、彼の言葉「生きることはアートそのものだ」は今回の展示の象徴であり今も息づいていました。
さっき見たばかりのデンマークハンマースホイとは正反対の空気がムンムン詰まっていて、その国の風土が生み出すもの/光の違いを痛感し、東京にいながらにして世界旅行をした気分になりました。

*1:線の研ぎすまされ方に圧倒された!画面の構成力!カッコイイ!