ヴィターリー・カネフスキー特集上映

カネフスキーの「動くな、死ね、甦れ!」を前回見たのは10数年前、横浜 黄金町の映画館だった。見たくて、足を伸ばして、恐らく初めて京急に乗って訪れたこの町の歴史など、私が知るはずもなかった。曇ってどよんとした日だった。ごちゃごちゃとした駅前を抜けると小さな川があり、静かで寂しさが漂っていた。そのにおいをひきづったまま古い映画館に入り、いよいよ鑑賞、呆然とただただ見入るしかできない作品だった。帰り道、興奮しているような落ち込んでいるようなワケわからない感情を抱えたまま、川の橋の上でぼんやりしたことを思い出す。
5年ほど前、「やさしい嘘*1」という映画を見ていて素敵だなあと思った子が、「動くな、死ね、甦れ!」のあの娘だと知ったときはほんとうに驚いた。生きてたんだ!って。それくらい、あの映画で生きる彼らは私の心に住んでいたのだ*2
そして今回、再び見ることが出来た。改めて見るとこんなに「笑える」映画だったのか!と驚いた。昔見たときには笑う余裕も無かった。といってもその笑いには、背筋にひやりとしたものが走るし最後にはドヨーンとするのだけれど。
それと今回気づいたこと。走るシーンが多いけれど極寒の地だけに凍った道だから、必ずツルッと滑ってしまう。これが妙なリズムを与えていて、この映画自体に結びつくようで面白かった。そして、冷たい空気をそっと走る音。隅っこが消えてゆく白い光。美しくて、哀しいなあ。なんてぽーっとしているわけにはいかない。屹然と佇んでいるのに、いきなりペシーン!と私の頬を叩くのだから。しかしふーん、それがどうしたの?とぷいっと行ってしまう。翌週見た「ひとりで生きる」は更に加速度増して、中指立てながらケラケラ笑って、私の心に大きなシミをつけて行ってしまった、どこかへ。
そんなとらえどころのないところが好きで、恐ろしくて、どうにも惹かれてしまう。



12月に入って、空の表情がまた変わったなあ。

*1:

*2:とてもいい映画だった。→http://d.hatena.ne.jp/mikk/20041120/p2