私の男

冒頭の、白く青みを帯びた視界と軋む流氷の音に目と耳を奪われて、外の暑さなど忘れてしまった。ジム・オルークによる音響は、極寒の張りつめた空気を繊細に透明に描き出す。奥底に暴力的で破滅的な衝動を秘めて。
子供時代を描くざらざらした質感にどきどきした。16mmで撮影したそうだ。記憶の欠片がカラカラ回っている感じ。花が初めて淳悟を目に留めたあの瞬間が忘れられない。子供時代の「花」を演じたのが、朝ドラでも子供時代の「花」役の子*1だったので、コピッとビックリしたズラよ。
二階堂ふみちゃんはあどけなさと妖艶さを併せ持ち、あの役が今まさにベストなタイミングでやってきたようだった。「熱海の捜査官」でのコミカルな役どころが懐かしい。「ほとりの朔子」の主役ながらも一歩引いた役どころもよかったなあ。
浅野さんは最近演じた探偵役が随分と棒でツマラナイ男だったけれど、今回のような不穏なダメ男役がやっぱり合う!! ただそのクズっぷりをアピールするがためのシーンを盛り込み過ぎじゃあないかしら。それと中盤とラストで幻想的に表現したシーン、あの演出はチョット萎えた。やってみたかったのはいいんだけど、今作は真っ向から撮ったままでいいのにな。骨太の印象だったのに、後半の緩さと唐突さも含めて、肝心なところで逃げてしまった感じ。藤竜也の演技をもちっと見たかった。
結局、花は自分を逃がしてくれた”お父さん”に「生きろ」といわれた、その強い思いに従って、本能のまましたたかに生き延びたのだな。
原作は未読なので案外そのままなのかもしれないけど、淳悟の恋人の在り方とか、田舎で親戚が集う場での役割とか、後半での花の就業とか、切り取り方は確かにわかるんだけど、監督のこういう部分、やっぱり好きじゃない、んだよなあと改めて思ってしまう。・・・読み返すとエラそうなことばっかり書いててスミマセン。。。

*1:山田望叶ちゃん、名前は「もちか」と読むのか!