今年の音甘映画館 【映画編】

泳ぎすぎた夜ダミアン・マニヴェル & 五十嵐耕平
今年はこの作品に尽きます。大好き。現実からちょっとだけ浮かび上がった、でも現実と地続きの、ちいさな掌につかんだ雪のような、なにか。今もふと、2匹の犬にわんわん!て無邪気に吠えるたからくんの笑顔を思い出すのです。大きくなっただろうなあ。


泣き虫しょったんの奇跡豊田利晃
1998年に「ポルノスター」で監督デビューし20周年記念作として、自身の基である「将棋」映画に真っ向から挑んだことに泣けた。日々のかけらを淡々と描くことで、誰かのさりげない言葉や表情が自分を形成し奇跡が紡がれるのだという、豊田監督の想いが伺えて素晴らしかったなあ。


きみの鳥はうたえる三宅唱
”彼らが笑う” ただそれだけで涙が出た。論理と感覚と身体が一体化して映像に刻まれた、繊細で大胆な作品。これまで制作してきた作品ひとつひとつの段階を経て、監督である前に、映画が好きで音楽が好きな30代前半の男性の日々がきちんと投影されているからこそだと思う。


「しあわせの絵の具」アシュリング・ウォルシュ
描かれる風景とそこに暮らす2人がとても美しく愛おしかった。やわらかな光の中歩く姿が目に焼き付いている。「ずっと描いてきてよかった」という言葉に泣いた。


「フロリダ・プロジェクト」ショーン・ベイカー
見終わって、ヒュートラ渋谷の長い長いエスカレーターを下りて交差点で空を見上げたらヴアアアア!となって、真向かいの駅出入り口から田園都市線に乗って二子玉川へ向かって、夕方の光で刻々と表情を変える空と鏡のような多摩川を暫くの間ぼーっと見ていた想い出。それくらい強烈な、映画としての作為性がすごかった。


そして、永年ずっと大切にしている映画をスクリーンで再び見た喜び。
「トラスト・ミー」ハル・ハートリー
どうにも不器用にしか生きられない、でも信じられる誰かがいるだけでという切なる想い。スッと心が浮き上がるこの感覚はいったいなんなのだろう。
1999年の夏休み金子修介
あの年の夏休みは遠い未来のまま、永遠に私のなかに在り続けるのだと実感した。


年々見る本数が減り、見に行ったのに寝落ちすることもある昨今だけど、それでも胸に落ちる映画に出会えたことが嬉しい。


夕ご飯食べてから、小屋を最後に綴ります。